終末期における介護

終末期における介護

死に直面した利用者は、少なからず死に対する不安を抱いているといわれている。利用者を見守る家族も不安を抱いている場合が多い。そこで、介護福祉士は、死に直面した利用者のつらさ、苦しみに共感し、最後までともに歩んでいくことになる。
死が近づくと、バイタルサインが変化し、身体的苦痛が増強する。介護福祉士は苦痛緩和のため、呼吸が楽になる体位の工夫など、医療職と連携し計画を立て実践する。
終末期で食欲が低下した利用者に対しては、嗜好を重視した介護を行う。
意識がもうろうとして飲み込みが悪くなったら、窒息を予防する意味で、無理に水分は与えない。口腔内の乾燥がある場合には、水を含ませたガーゼ等で口の中を湿らせる。義歯があればはずして水につけておく。

 苦痛緩和の方法

体位の工夫
・同一体位による圧迫を最小限にするため、振動を与えないように体位変換を行う。
・呼吸を楽にするため、体位や枕の位置を工夫する。呼吸が楽な体位としては、半座位などがよい。
を曲げた体位は腹筋と下腿筋の緊張を緩和できる。
・痛みのある部位はにする。
・呼吸状態を確認しながら必要であれば枕をはずし、気道が開きやすい姿勢にする。

倦怠感等への工夫
・手足をマッサージする。
・下肢への冷感には湯たんぽの使用や、ゴムのきつくない靴下等で保温する。
・好きな音楽を流す。

 

 臨終時の介護

独居高齢者の死に立ち会った場合には、主治医や家族がいれば連絡をする。チームアプローチの体制がない、主治医がいないなどの場合には、近くの病院警察に連絡をする。
死後のケア(エンゼルケア)は、家族等が利用者と十分にお別をしてから行う。家族等が一緒に行う事もある。
死後のケアを行う目的としては、身体をきれいにすることで死によって起こる外観の変化を目立たなく、その人らしく整えることにある。死亡診断が出された後、死後硬直が起こる1~2時間までにケアを終了する。

 

 グリーフケア

終末期ケアにおいては、家族も悩み苦しんでいるため、家族を単に介護する人としてみるのではなく、ケアの対象者として位置づける。
終末期の家族への援助では、介護負担を考慮しつつ、家族に悔いが残らないように、利用者とともに過ごす時間や、介護する時間がもてるように支援する。家族の悲しみや苦しみに共感し、話を十分に聞くことが大切である。
家族支援には、利用者がなくなった後のグリーフケア(遺族ケア)も含まれる。グリーフケアでは死別後の家族が悲嘆作業・喪の作業(グリーフワーク)を十分に行い、新しい出発ができるように支援する。

 

死のとらえ方

 生物学的な死

生命維持活動を行ってきた生体のすべての生理機能が停止し、回復不可能な状態をいう。

 法律的な死(脳死)

脳の機能がほぼ完全に失われ回復不可能な状態である。人工呼吸器などで心臓を動かし続けたとしても、数日後には生命徴候である呼吸・循環器の機能が停止する。

 

 死の三大徴候

心停止・呼吸停止・瞳孔散大をいう。生存に最も重要な心臓(循環)、肺(呼吸)、脳(中枢)の三大臓器すべての機能が停止したことによって判断する。

死亡は、医師が死を診断した時点をいう。医師が死亡を確認するまで死亡とは認められない。家族を含め、死亡が確認されるまで、からだに触れることは違法行為となる。
死亡前24時間以内に医師が診察している場合には、改めて診察をしなくても死亡診断書を作成できる。それ以外で医師が立ち会えない死の場合、医師は死亡診断書を書くことはできず、異状死として警察に届け、死体検案が必要になる。

 

 尊厳死

尊厳死とは、人としての尊厳を保ちながら死を迎えることである。人為的な栄養や人工呼吸器など医療装置につながれて、延命だけを目的とすることを拒むもので、事前に本人の意思を確認しておくことが重要である。

 

 リビングウィル

どこで、誰と、どのように、最後を迎えたいのか、終末期の過ごし方や医療処置(救急蘇生や生命維持装置など)についてなど、本人の意思を事前に書面(遺書)に残すことをリビングウィルという。

 

 

終末期から危篤、死亡時のからだの理解

■終末期では、循環機能の低下により、尿量減少傾向となる。また下肢から浮腫が現れるようになる。空腹口渇感も感じにくくなる。

 呼吸の変化

呼吸運動は、脳の延髄が司っている。終末期では、血圧の低下により、血液が延髄まで運搬されないため、酸素や栄養の不足となり呼吸運動が維持できなくなる。
終末期に呼吸の変化では、呼吸の間隔が不規則で深さも乱れてくる。呼吸が浅くなると、脳も低酸素状態になり、体内モルヒネが分泌されるため苦痛が和らいでくる。

~死の直前の呼吸変化~
チェーンストークス呼吸
10~30秒ほど呼吸がとまり、浅めの呼吸からゆっくりと深く大きな呼吸へ、というリズムを繰り返す。

肩呼吸
息をするたびに肩を動かして、一生懸命呼吸しているような、本当に肩で呼吸をしているかのようにみえる。

下顎呼吸
下顎を魚のように、パクパクと動かしてする呼吸で、死が数時間以内である場合に多くみられる。

鼻翼呼吸
小鼻が開いて呼吸する状態。少しでも酸素を取り込もうとしているための呼吸

 

死前喘鳴
死前喘鳴とは死に直面している場合や衰弱した状態で喀痰を自力で出せない場合に、分泌物が下咽頭にたまり喉の奥で、ゼロゼロ、ヒューヒューという音を発しながら呼吸することをいう。この状態になると、意識は低下しているので本人は苦痛でないことが多い。

 

 死後の身体的変化

死亡すると、体は徐々に体温を失う。からだの循環は停止するため、血液が体の下になる部分にたまり、暗紫色の斑点を生じる。これを死斑という。死斑は死後20~30分くらいから始まり、8~12時間で最大となる。
死亡により体の筋肉は弾性力を失い、関節は固まった状態となる。筋肉が硬化する状態を死後硬直といい、死後2~4時間で始まり、半日程度で全身に及び、30~40時間で硬直が解け始める。死後硬直は温度等の環境に影響を受ける。

 

 

 

「死」に対するこころの理解

 

 キューブラー・ロスの5段階モデル

キューブら―・ロスは、死を受容する過程5段階に理論化した。
第1段階ー否認
死の運命の事実を拒否し否定する段階(死の宣告のショックに対する自己防衛)

第2段階ー怒り
否定しきれない事実を宿命だと自覚した段階(「なぜ私が」という問いかけと怒り

第3段階ー取引
奇跡への願いの気持ちを表す段階(信仰している神へのお願いなど)

第4段階ー抑うつ
気持ちが滅入ってしまう段階(精神的な落ち込み)

第5段階ー受容
死を受容し、こころにある平安が訪れる段階(静かに受け入れられるようになる)

キューブラー・ロスの受容までの5段階は一方向ではなく、必ずしもこのとおりにたどるものではない。これまでの生活歴、家族歴、死生観などにより、死への恐怖心や不安の理由がそれぞれ異なるように、受容までのプロセスも多様である。

 

 

 大切な人の死を受容する段階

大切な人との死別後の悲嘆を乗り越え、家族が再び自分の人生を歩んでいけるかどうかは、終末期のかかわり方が大きく影響する。介護福祉士には、家族が利用者の死を受容できるための援助が求められる。

さまざまな感情(孤独感、罪悪感、怒りなど)

死が間近なことを実感

こころの準備

死別後の悲嘆

受容

~悲嘆反応の種類~

身体的反応睡眠障害、食欲減退など
情緒的反応悲しみ、怒り、孤独感、罪責感など
知覚的反応非現実感、幻覚など
行動的反応混乱、動揺、探索行動()など

探索行動:探しても見つからないことはわかっていても、故人にかかわりの深い場所に行くなどして、故人を探そうとする行動。

 

終末期の介護の重要ポイント暗記

■次の文章の空欄を埋めよ。
終末期では、循環機能の低下により、尿量①  傾向となる。また下肢から②  が現れるようになる。空腹口渇感も感じにくくなる。

解答と解説
①減少 ②浮腫

■次の文章の空欄を埋めよ。
死亡すると、体は徐々に体温を失う。からだの循環は停止するため、血液が体の下になる部分にたまり、暗紫色の斑点を生じる。これを①  という。①  は死後20~30分くらいから始まり、8~12時間で最大となる。
死亡により体の筋肉は弾性力を失い、関節は固まった状態となる。筋肉が硬化する状態を死後硬直といい、死後2~4時間で始まり、半日程度で全身に及び、30~40時間で硬直が解け始める。死後硬直は温度等の環境に影響を受ける。

解答と解説
①死斑

 

終末期の介護に関する過去問

■臨終期の身体の様子に関する記述として、適切なものを1つ選びなさい。(第30回本試験)

1.手足は温かい。
2.浮腫の出現は少ない。
3.喉からゴロゴロする音が聞かれる。
4.尿量は増加する。
5.呼吸のリズムは規則的である。

解答と解説
答え 3
1.臨終期は心臓のはたらきが弱まるので、全身に血液を送る力が弱くなり、手足は冷たい。

2.臨終期は全身の循環機能が低下するなど、浮腫が生じやすくなる。

3.臨終期には自分で咳をしてたまった分泌物を出すことができないため、呼吸のたびに喉からゴロゴ口というような音が聞かれる。

4.減少する。

5.終末期の呼吸の変化では、呼吸の間隔が不規則で深さも乱れてくる。呼吸が浅くなると、脳も低酸素状態になり、体内モルヒネが分泌されるため苦痛が和らいでくる。

 

■終末期で食欲が低下してきた利用者の食事介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回本試験)

1.食事の回数を増やす。
2.1回の食事量を増やす。
3.高カロリーの食事を用意する。
4.嗜好を重視する。
5.経管栄養を勧める。

解答と解説
答え 4
終末期では利用者が食べたいときに、食べたいものを食べることが大事である。また、「口から食べる」という喜びを利用者自身が最後まで感じられるように支援することが大切である。

■施設入所者の終末期から死後における家族への支援として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回本試験)

1.付き添いやすい環境を整える。
2.在宅と比べて、家族への支援の必要性は乏しい。
3.状態が変化したときだけ家族に報告する。
4.家族が希望しても、死後の処置は職員で行う。
5.故人の思い出話は控える。

解答と解説
答え 1
2.在宅、施設に関係なく、家族への支援は重要である。

3.適宜家族と連絡をとり、利用者の様子を伝え、利用者と家族をつなぐとともに、家族との関係形成も大切にする。

4.家族の希望を尊重し、家族と職員が協力して死後の処置を行う事が大切である。

5.控えるのではなく、むしろ故人との思い出話を家族と職員がすることで、悲しみを分かち合うことにつながる。

 

■終末期ケアに関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回本試験)

1.家族の悲嘆に対するケアは,終末期ケアとともに行う。
2.緩和ケアとは,身体的苦痛を取り除くことである。
3.口腔ケアは控える。
4.看取りの場を決めるのは,医師である。
5.認知症対応型共同生活介護(グループホーム)利用者の終末期ケアは,病院で行う。

解答と解説
答え 1
2.緩和ケアとは、身体的苦痛だけではなく、精神的苦痛や霊的(スピリチュアル)な苦痛も和らげるケアである。

3.終末期でも口腔ケアは必要不可欠である。

4.看取りの場を決定するのは医師ではなく、本人である。本人自らが決定することが困難な場合は、家族が行う。

5.認知症対応型共同生活介護だからといって、終末期は病院で行うという決まりはなく、本人や家族の意思を尊重して決める。

 

■終末期にある利用者を施設で看取る家族への支援として、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第30回本試験)

1.毎日面会に来るように促す。
2.家族が利用者のためにできることを提案する。
3.積極的な情報提供は控える。
4.感情を表出しないように助言する。
5.パブリックスペースを用意する。

解答と解説
答え 2
1.毎日の面会がお互いにとって望ましいとは限らない。

2.終末期にある利用者を前にすると、家族は何をしてよいのか戸惑うこともある。

3.積極的な情報提供が、家族の意思の決定を尊重することにつながる。

4.家族がその時々の感情を表現することは、少しずつ気持ちを整理し、大切な人の死を受け入れていくうえで必要なプロセスである。

5.パブリックスペースとは、誰もが共有することのできる開放的な場所のことをいう。誰にも気兼ねなく過ごすことのできるプライベートな環境を整え、利用者に思いや感謝を伝えることが、看取りを終えたとき家族のこころのよりどころや安定につながる。

 

■施設において、介護福祉職の行う死後の処置として、適切なものを1つ選びなさい。(第30回本試験)

1.義歯ははずす。
2.衣服は施設が指定したものを用いる。
3.着物の場合は右前に合わせる。
4.着物の場合は帯紐を縦結びにする。
5.死後の処置は、死後3時間経過してから行う。

解答と解説
答え 4
1.義歯は可能な限り装着し生前の顔貌に近づけることが大切である。

2.衣服は家族の希望のものや、本人が生前に準備をしていたものを用いる。

3.着物の場合は、通常と反対の左前に合わせる。

4.故人の衣装を結ぶ際、通常の蝶結びではなく、縦に結ぶことです。縦結びは、結んだ紐の輪や紐の先が根元の紐と垂直になるように結びます。

5.医師による死亡診断が行われ、家族との対面をすませた後は、速やかに死後の処置を始めることが望ましい。

 

■Fさん(72歳、男性)は数か月前から食欲不振があり、体重も減少した。市内の総合病院を受診したところ、末期の胃がんと診断され、緩和医療を受けることを勧められた。
1~5のFさんの心情に当てはまるキューブラー・ロスの提唱した心理過程の表現をそれぞれ答えよ。また3段階目に当てはまるのはどの選択肢か(第27回本試験改)

1.「病気を治すためなら、財産を全部使ってもいい」
2.「なぜ私だけが病気になって、死ななければならないのか」
3.「診断は何かの間違いで、とても信じられない」
4.「死は誰にでも訪れる自然なことだから、受け入れよう」
5.「末期がんなら、何をしてもどうせ無駄だ」

解答と解説
キューブラー・ロスの5段階理論
否認ー怒りー取引ー抑うつー受容

1.取引 2.怒り 3.否認(拒否) 4.受容 5.抑うつ
三段階目は 

 

■キューブラー・ロス(Kubler-Ross, E.)が提唱した死の受容過程における「取り引き」 に該当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。(第30回本試験)

1.死ぬのがなぜ自分なのかと怒る。
2.自分が死ぬことはないと思う。
3.つらい治療を我慢して受けるので助けてほしいと願う。
4.安らかな気持ちで死を受け入れる。
5.もう助からないと思って絶望する。

解答と解説
答え 3

1.第2段階の「怒り」である。

2.第1段階の「否認」である。

4.第5段階の「受容」である。

5.第4段階の「抑うつ」である。

 

介護老人福祉施設で最期まで過ごすことを希望する利用者への対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験過去問)

  1. 終末期の介護方針を伝えて,意思確認を行う。
  2. 入所後に意思が変わっても,入所時の意思を優先する。
  3. 本人の意思よりも家族の意向を優先する。
  4. 本人の意思確認ができないときは,医師に任せる。
  5. 意思確認の合意内容は,介護福祉職間で口頭で共有する。
解答と解説

答え 1

2.最新の意思表示を優先する。

3.家族の意向も大切であるが、最も優先すべきは本人の意思である。

4.本人の意思疎通ができない場合は、キーパーソンや家族の意思を尊重する。

5.口頭だけでなく、書面等で記録しておく必要がある。

タイトルとURLをコピーしました