介護福祉士国家試験のICF

ICFとは

国際生活機能分類と訳されている。個人の情報(健康状態、家族関係、趣味、病歴etc)の整理の仕方というイメージで差支えない。
ICFの目的を一言で言えば、「“生きることの全体像”を示す“共通言語”」である。生きることの全体像を示す「生活機能モデル」を共通の考え方として、さまざまな専門分野や異なった立場の人々の間の共通理解に役立つことを目指している。
具体的には次のような目的に用いられる。

・健康や生活環境に関する共通言語の確立で、様々な関係者間(例えば病院と介護施設)のコミュニケーションを改善

・国、専門分野、サービス分野、立場、時期などの違いを超えたデータの比較

・健康に関する状況、健康に影響する因子を深く理解するため

 

ICFでは健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子の各要素を約1500項目に分類し、それぞれが相互作用していると考える。

具体的に見てみると、心身機能の項目は

「心身機能」

1精神機能
2感覚機能と痛み

8皮膚及び関連する構造の機能

と8項目に分けられ、さらにそのひとつひとつの項目が

8-1皮膚の保護機能
8-2皮膚の修復機能

というような具合にさらに細かく分類されている。

介護福祉士国家試験では細かい分類まで記憶する必要はない

生活機能とは、ICFの中心概念であり、人が「生きる」ことの3つのレベルである、

①心身機能・身体構造
②活動
③参加

の3つを包括した概念である。
3つのレベルの内容は次の通りである。

心身機能・身体構造(生物レベル、生命レベル)
生命の維持に直接関係する、身体・精神の機能や構造で、これは心身機能と身体構造とを合わせたものである。心身機能とは、たとえば手足の動き、精神の働き、視覚、聴覚、内臓の働きなど。身体構造とは、手足の一部、心臓の一部(弁など)などの、体の部分のこと。また、「心身機能・身体構造」に問題が生じた状態を機能障害(構造障害も含む)としている。

具体例)
・左半身筋力低下 
・毎晩目つぶしをされるというような妄想がでてくる

活動(個人レベル、生活レベル)
生活行為、すなわち生活上の目的を持ち、一連の動作からなる、具体的な行為のこと。これはあらゆる生活行為を含むものであり、実用歩行やその他のADL(日常生活行為)だけでなく、調理、掃除などの家事行為、職業上の行為、余暇活動(趣味やスポーツなど)に必要な行為、社会生活上必要な行為がすべて入る。またICFでは「活動」を「できる活動」(能力)「している活動」(実行状況)との2つの面に分けて捉える。活動に問題が生じた状態は活動制限としている。

具体例)
・入浴は自宅で一部介助
・外出時はシルバーカーを使用して移動

参加(社会レベル、人生レベル)
家庭や社会に関与し、そこで役割を果たすことである。社会参加だけではなく、主婦として、あるいは親としての家庭内役割であるとか、働くこと、職場での役割、あるいは趣味にしても趣味の会に参加する、スポーツに参加する、地域組織のなかで役割を果たす、文化的・政治的・宗教的などの集まりに参加する、などの広い範囲のものが含まれる。参加に問題が生じた状態は参加制約としている。

具体例)
・施設で毎朝のゴミ捨てを担当している。
・毎年地域の祭りに参加している。

 

環境因子
「環境因子」というと、建物・道路・交通機関・自然環境のような物的な環境のみを考えがちであるが、ICFはそれだけでなく、人的な環境(家族、友人、仕事上の仲間など)、態度や社会意識としての環境(社会が生活機能の低下のある人をどうみるか、どう扱うか、など)、そして制度的な環境(医療、保健、福祉、介護、教育などのサービス・制度・政策)と、ひろく環境を捉える。

具体例)
・長女夫婦が近所に住んでいる
・生活保護を受けている

 

●個人因子
その人固有の特徴をいう。これは非常に多様であり、ICFではほかの要素のようにまだ分類できていない。年齢、性別、生活歴(学歴、職歴、家族歴など)、価値観、などの例が挙げられている。「個人因子」は「個性」というものに近いものであり、医療でも福祉でも、職業、教育、その他でも、患者、利用者、生徒などの個性を尊重しなければいけないということが強調されている現在、重要なものである。

具体例)
・未婚(こどもなし)
・着物の着付けが得意
・年齢、性別

ICFでは、ほとんどすべての要素が上図のように双方向の矢印で結ばれており、1つの要素が変化するとその他の1つまたは複数の要素を変化させる相互関係が存在する。影響の仕方にはマイナスの影響もあればプラスの影響もある。例えば、環境因子の例として、点字ブロックは目の不自由な人にとってはプラスの効果があっても、歩行困難のある人にはマイナスになることもある。この影響の与え合いの内容・程度は一人一人違うのであり、どの要素がどの要素に影響しているのかを具体的にとらえることが重要である。

介護の場面で利用されるICFの例

■介護の場面におけるICFの利用例

 

ICFの利用例出典 通所ケア2006

ICIDHとは

ICIDH(国際障害分類は、障害を3つの次元で整理している。機能障害とその結果生じた機能面の制約である能力障害、さらに能力障害により社会的関係のなかで権利が侵害されているという社会的不利が生じるとされた。

ICIDHの3つの次元には明らかな区別があり、病気・変調機能障害能力障害社会的不利いった図式が、障害のある人の問題を論じるときの根拠となっていた。この概念は、障害のある人の状態のマイナス面を強調することになり、機能障害があれば必ず能力障害が生じ、それが社会的不利につながる、というような一方向的な図式になって、現実にそぐわない面があった。例えば、盲目であるが世界的に有名なピアニストになった人もいる。

そこで生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、環境因子個人因子の観点を加えたICFが登場した。

ただし、ICFはICIDHの上位互換というわけではない。病気やケガを治療することが主目的の医療の現場などではICIDHでまとめられた情報のほうが使いやすい場合もある。

 

■医学モデルと社会モデル
障害に対する見方として医学モデル社会モデルがある。医学モデルは、障害を個人の問題としてとらえ、ICIDHにあるように病気や外傷等の健康状態から生じると考え、専門家による治療で回復させることを目標としてきた。一方、社会モデルは、障害は主として社会(環境)によってつくられた人権問題や政治的な問題とみなし、障害のある人の社会への完全参加と環境の変更を目標としてきた。

医学モデルと社会モデルは対照的で、従来対立するモデルとして考えられていたが、ICFでは二つのモデルを統合したアプローチを提案している。

 

ICFに関する重要ポイント暗記

■ICFのモデルを描け

解答と解説

■ICFにおいて、サービスや制度はどの因子にあたるか。

解答と解説
環境因子

■ICIDHに関する次の文章の空欄を埋めよ。

ICIDH(国際障害分類)は、障害を3つの次元で整理している。①   とその結果生じた機能面の制約である②   、さらに能力障害により社会的関係のなかで権利が侵害されているという③   が生じるとされた。
この概念は、障害のある人の状態の④   を強調することになり、機能障害があれば必ず能力障害が生じ、それが社会的不利につながる、というような一方向的な図式になって、現実にそぐわない面があった。そこで生活機能という⑤   からみるように視点を転換し、環境因子個人因子の観点を加えたICFが登場した。

解答と解説

機能障害 ②能力障害 社会的不利 ④マイナス面 ⑤プラス面

■ICFが評価される側面に、障害の見方に関する2つのモデルを統合した考え方を提示していることがある。2つのモデルを何というか。

解答と解説
医学モデル社会モデル

 

介護福祉士国家試験のICFに関する過去問

■Dさん(42歳、男性)は、営業の仕事をしていた。休日に趣味のサイクリングの最中、交通事故に遭った。脊髄を損傷し、対麻痺の状態になり、車いすで移動する生活になった。
Dさんに関する次の記述のうちICFにおける「心身機能・身体構造」と「活動」の関係を示すものとして、適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試験)

1.移動に車いすを使う生活になり、退職することになった。
2.上肢は自由に動かせる状態であり、車いすで移動できるようになった。
3.玄関の周りをバリアフリーにすることで、一人で外出できるようになった。
4.サイクリングの楽しさを忘れられず、車いすマラソンに取り組む準備を始めた。
5.脊髄損傷のために、排尿のコントロールが困難になった。

解答と解説
答え 2

1.退職になったという点は、参加制約に該当する。
2.上肢は自由に動かせる(心身機能・身体構造)車いすで移動できるようになった(活動
3.玄関の周りをバリアフリーにした点は、環境因子に該当する。
4.この選択肢は「参加」に該当する。
5.脊髄損傷や排尿障害は心身機能・身体構造に該当する。また、排尿コントロールが困難になり、排泄の失敗がみられるというのであれば、活動制限に該当する。

 

■Dさん(30 歳,女性)は,脳性麻痺(cerebral palsy)で下肢の運動機能障害があり,電動車いすを使用している。Dさんは,自己決定・自己責任による生活をしたいと考えて,一人暮らしを始めた。週に一度ピアカウンセリング(peercounseling)のボランティアをして,友人と一緒に趣味の映画鑑賞に出かけることを楽しみにしている。

Dさんに関する次の記述のうち,ICF(International Classification of Functioning,Disability and Health:国際生活機能分類)の「環境因子」に分類されるものとして,適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)

1.下肢の運動機能障害があること
2.電動車いすを使用していること
3.ボランティアをしていること
4.仲の良い友人がいること
5.映画鑑賞が趣味であること

解答と解説
答え 4
1.「心身機能」に該当する。

2.ICFの「環境因子」には、(1)生産品と用具、(2)自然環境と人間がもたらした環境変化、(3)支援と関係、(4)態度、(5)サービス・制度・政策がある。「電動車いすを使用している」ということは、「活動」と考えることができるが、もう一つ、「環境因子」の(1)生産品と用具に該当すると考えることもできる。しかし、問題文では適切なものを一つ選べとなっているので、選択肢4の仲の良い友人がいることを「環境因子」とするならば、電動車いすを使用していることは「活動」と回答することを問題作成者は想定していると考えられる。

3.ボランティアをしていることは「活動」である。

4.仲の良い友人がいることは「環境因子」(3)支持と関係に該当する。

5.映画鑑賞が趣味であることは「活動」である。

 

■ICF (International Classification of Functioning. Disability and Health :国際生活機能分類)の社会モデルに関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国試験)

1.障害は、個人の問題である。
2.障害は、病気・外傷などから直接的に生じる。
3.障害は、専門職による個別的な治療で解決する。
4.障害は、環境によって作り出されるものである。
5.障害への対処では、個人のよりよい適応と行動変容が目標とされる。

解答と解説
答え 4

障害に対する見方として医学モデル社会モデルがある。医学モデルは、障害を個人の問題としてとらえ、ICIDHにあるように病気や外傷等の健康状態から生じると考え、専門家による治療で回復させることを目標としてきた。一方、社会モデルは、障害は主として社会(環境)によってつくられた人権問題や政治的な問題とみなし、障害のある人の社会への完全参加と環境の変更を目標としてきた。
医学モデルと社会モデルは対照的で、従来対立するモデルとして考えられていたが、ICFでは二つのモデルを統合したアプローチを提案している。

 

■Dさん(70歳、女性)は10年前に人工肛門(ストーマ)を造設し、2年前に脳出血を患って軽い右片麻痺が残った。最近、物忘れが目立ってきた。また、同居する娘の仕事が忙しくなってきた。
Dさんに関する情報のうち、ICFの環境因子に該当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)

1.70歳の女性である。
2.人工肛門(ストーマ)を造設した。
3.軽い右片麻痺が残った。
4.もの忘れが目立ってきた。
5.娘の仕事が忙しくなってきた。

解答と解説
答え 5
1.個人因子である。

2.3.4.心身機能・身体構造に該当する。

 

■次の事例を読み以下の問題に答えよ。(第29回介護福祉士国家試験)
〔事 例〕
Eさん(67 歳,女性,要介護3 )は,1 年前,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)で倒れて,左片麻痺,体幹機能の低下が残った。排泄訓練を目的として介護老人保健施設に入所した。入所時のEさんは,不自由でも,右手でベッド柵を掴つかんで起き上がることやベッドの端に座ることはできたが,立位保持はできなかった。おむつを着用しているが,「おむつは嫌」と自分の気持ちを訴えていた。医師は着脱と拭く行為には介助が必要だが,車いすから便座に移ることは可能であると判断した。F介護福祉職はアセスメント(assessment)を行い,本人の思いを考慮して介護計画の短期目標を,「車いすから便座に移り、排泄する」と設定して,評価日は1 か月後とした。理学療法士と連携して,トイレで移乗のための立位訓練を始めた。

・ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)に基いて情報を分類する場合,Eさんの「能力」(できる活動)に該当するものとして,適切なものを1 つ選びなさい。

1.右手でベッド柵を握る動作
2.ベッド上での座位の保持
3.手すりを使っての立位の保持
4.「おむつは嫌」という気持ちの表出
5.車いすから便座への移乗

解答と解説
答え 5
普段の生活で「している活動」と、適切な支援・訓練によって「できる活動」は違う点に注意する。

1,2.している活動である。

3. 立位保持はできなかったとあるため、できない活動である。

4.本人が訴えているため、している活動(おむつを使わないこと)である。

5.医師の判断もあり、できる活動として捉えられる。

 

■Gさん(68歳,女性,要介護2)は,小学校の教員として定年まで働いた。Gさんは,3年前にアルツハイマー型認知症(dementiaoftheAlzheimer’stype)と診断された。夫は既に亡くなっており,長男(30歳)と一緒に暮らしている。週に2回通所介護(デイサービス)に通い,レクリエーションでは歌の伴奏をよくしている。その他の日は,近所の人や民生委員,小学校の教え子たちがGさん宅を訪問し,話し相手になっている。
最近,Gさんは食事をとることを忘れていたり,トイレの場所がわからず失敗したりすることが多くなった。

介護福祉職が,Gさんの現状をアセスメント(assessment)した内容と,ICF(InternationalClassificationofFunctioning,DisabilityandHealth:国際生活機能分類)の構成要素の組合せとして,最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験過去問)

  1. アルツハイマー型認知症(dementiaoftheAlzheimer’stype)は,「心身機能・身体構造」にあたる。
  2. レクリエーションで歌の伴奏をすることは,「参加」にあたる。
  3. 近所の人や民生委員,小学校の教え子は,「個人因子」にあたる。
  4. 小学校の教員をしていたことは,「環境因子」にあたる。
  5. トイレの場所がわからなくなることは,「健康状態」にあたる。
解答と解説
答え 2
1.アルツハイマー型認知症は、「健康状態」にあたる。

3.近所の人や民生委員,小学校の教え子は,「環境因子」にあたる。

4.小学校の教員をしていたことは,「個人因子」にあたる。

5.トイレの場所がわからなくなることは,「心身機能・身体構造」にあたる。

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