記憶のしくみ

記憶のしくみ

記憶における最初の段階は、見たもの、聞いたものなど知覚したイメージが感覚器に入ってくる刺激情報で、①感覚記憶と呼ばれる。刺激情報は1秒以内に脳の中に取り込まれ、言葉、数字、図形などに符号化され②短期記憶に転送される。常に内容が入れ替わっていくような短期記憶は、反復することによって③長期記憶に転送される。

★心理学領域では感覚記憶短期記憶長期記憶に分類される。一方、臨床神経学領域では即時記憶近時記憶遠隔記憶に分類される。(ここまで細かく覚える必要はないが、参考までに)

 短期記憶と作業記憶(ワーキングメモリ―)

4629882といった数字を単に覚えるのは短期記憶である。
37+36-15=○○のような計算では【37+36=73】を頭の中で保持する。そして、73から15を引くという処理も加わるのが作業記憶(ワーキングメモリ)である。

 

 感覚記憶

高齢になると感覚記憶が低下する。これは、視力や聴力などの感覚機能が低下して、感覚器からの情報が減少するためと考えられる。

 

 短期記憶

短期記憶加齢の影響をほとんど受けないと考えられているが、作業記憶には加齢の影響が顕著にみられる。

 

 長期記憶

陳述記憶(言葉で説明できる記憶)

種類

特徴

エピソ|ド記憶

自分にまつわる思い出と考えればよい。言語的記憶非言語的記憶がある。

通っていた小学校の先生やクラスメートの名前。もしくは、友だちの間で流行っていたクイズなど。それらの思い出のうち、言葉で言い表せるものが言語的記憶であり、言い表せないものが非言語的記憶である。
毎年、夏休みに家族で旅行した海の色や波の音の思い出なら非言語的記憶だ。言葉ではなく、映像やメロディーで刻まれた記憶である。

意味記憶

一般的な知識についての記憶。反復学習によって覚えた記憶(言語的記憶と非言語的記憶)。反復学習によって覚えた記憶のうち、言葉で言い表せるものが言語的記憶で、言い表せないものが非言語的記憶だ。

教科書を繰り返し読む、あるいは練習問題を片端から解いて覚えた英単語や数学の公式は、言語的記憶に含まれる。一方、絵画や図形、音楽などに関する知識は非言語的記憶である。たとえば、ホテルを訪れたとしよう。ホールには音楽が流れている。フレーズを少し聞いただけで、(これは『ボヘミアンラプソディー』だな)と気づく。これが非言語的記憶である。

非陳述記憶(言葉で説明できない記憶)

種類

特徴

手続き記憶

やり方・技能など、体で覚えた記憶

自転車の乗り方

プライミング記憶

一度見聞きしたことが、その後の経験に無意識に影響する記憶

日常の何気ない動作・行動、思い込み。

”にんじん、こまつな、ほうれそんう、キャベツ”

↑のほうれそんうをほうれんそうと誤って読んでしまうようなすでにある記憶があとの事柄に影響を与える現象

 

長期記憶のうち、意味記憶手続き記憶、プライミング記憶加齢の影響を受けにくいと考えられているが、エピソード記憶には加齢による影響が指摘されている。青春時代の思い出のような、過去に体験した古いエピソードは記憶に残りやすいが、生活の中で生じる出来事や体験などの新しいエピソードには加齢の影響が顕著にみられる。

 

 知能

知能の加齢変化として、新しいことを学習したり、新しい環境に適応したりする流動性知能には低下が認められるが、経験と強く関係する結晶性知能は高齢期でも比較的遅くまで維持される。

高齢者の知能検査には、ウェクスラー式成人知能検査・第3版(WAIS-Ⅲ)が最もよく使われる。WAIS‐Ⅲの対象年齢は16歳から89歳までで、会話で行われる言語性検査(一般常識や語彙力、計算力などで測定される)によって結晶性知能(結晶性IQ)、道具を使う動作性検査(図形処理の構成能力、数唱、符号を書き写す作業などで測定される)によって流動性知能(流動性IQ)全体としての知能(全検査IQ)が知能偏差値として測定される。

加齢以外にも、高齢者の知的能力に影響を及ぼす要因は、身体的要因、心因的要因、社会的文化的要因などがある。加齢者自体による変化とそうでないものは区別して考えなければならない。

 

記憶に関する重要ポイント暗記

■記憶に関する次の文章の空欄を埋めよ。

記憶における最初の段階は、見たもの、聞いたものなど知覚したイメージが感覚器に入ってくる刺激情報で、①    と呼ばれる。刺激情報は1秒以内に脳の中に取り込まれ、言葉、数字、図形などに符号化され②    に転送される。常に内容が入れ替わっていくような短期記憶は、反復することによって③    に転送される。

★短期記憶と作業記憶(ワーキングメモリ―)
4629882といった数字を単に覚えるのは②    である。
37+36-15=○○のような計算では【37+36=73】を頭の中で保持する。そして、73から15を引くという処理も加わるのが④     である。

解答と解説
感覚記憶 ②短期記憶 ③長期記憶 ④作業記憶(ワーキングメモリ―)

■表の空欄を埋めよ。

長期記憶
陳述記憶(言葉で説明できる記憶)

種類

特徴

①    

自分に起こった出来事の記憶。特定の期間と場所に結びつく

昨日の夕飯はカレーだ。

②    

一般的な知識についての記憶

・この花は桜だ。

・1+1=2

非陳述記憶(言葉で説明できない記憶)

種類

特徴

③    

やり方・技能など、体で覚えた記憶

自転車の乗り方

④    

一度見聞きしたことが、その後の経験に無意識に影響する記憶

日常の何気ない動作・行動、思い込み

解答と解説
エピソード記憶 ②意味記憶 ③手続き記憶 ④プライミング記憶

■次の記憶を加齢の影響を受けやすいものと、受けにくいものい分けよ。
感覚記憶、手続き記憶、意味記憶、エピソード記憶、短期記憶、作業記憶

解答と解説
加齢の影響を受けやすい:
エピソード記憶、作業記憶
※青春時代の思い出のような古いエピソードは記憶に残りやすい
加齢の影響が少ない:
短期記憶、意味記憶、手続き記憶

 

記憶に関する過去問

■記憶に関する記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。(第27回本試験)

1.短期記憶では、膨大な情報の貯蔵が可能である。
2.記憶には、記銘と保持と想起の3つの過程がある。
3.手続き記憶とは、自分に起こった出来事に関する記憶である。
4.エピソード記憶とは、一般的な知識についての記憶である。
5.記憶の処理は、中脳で行われる。

解答と解説
答え 2
1.膨大な情報の貯蔵が可能なのは長期記憶である。

3.自分に起こった出来事に関する記憶はエピソード記憶である。

4.一般的な知識についての記憶は意味記憶である。

5.記憶の処理は、脳の海馬で行われる。

 

■脳の中で記憶をつかさどる部位として,正しいものを1 つ選びなさい。(第29回本試)

1.延髄
2.海馬
3.視床
4.松果体
5.小脳

解答と解説
答え 2
1.延髄は呼吸や循環器など生命の維持に必要な機能を担っている。

3.視床は視覚や聴覚と関係した器官である。

4.松果体は概日リズムを調整するホルモン(メラトニン)を分泌する器官である。

5.小脳は運動機能を調整する役割を担っている。

 

■加齢の影響を強く受ける記憶として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回本試験)

1.個人の生活の中で生じる出来事や体験に関する記憶
2.学習や経験によって獲得された知識の記憶
3.スポーツなど、自分の体で覚える記憶
4.過去の社会的事件など、自分の体験とは直接関わらない記憶
5.人の顔や風景など、自覚せずに残されている記憶

解答と解説
答え 1
1.エピソード記憶であり、加齢により低下する。
2.意味記憶で低下しにくい。
3.手続き記憶で低下しにくい。
4.長期記憶(≒遠隔記憶)で低下しにくい
5.人の顔や風景など自覚せずに残されている記憶は、意味記憶のうち非言語記憶に属し、加齢による著しい影響は受けない。

 

■老化に伴う知的機能の変化に関する次の記述のうち,適切なものを1 つ選びなさい。(第29回本試験)

1.目から入る感覚記憶は低下しやすい。
2.からだで覚えた手続き記憶は忘れにくい。
3.昨日の出来事などのエピソード記憶は忘れにくい。
4.計算などの流動性知能は低下しにくい。
5.経験や学習で得られた結晶性知能は低下しやすい。

解答と解説
答え 2
1.視覚や聴覚などの感覚の低下に伴い、記憶も低下する可能性があるが、視覚による感覚記憶が低下しやすいということはない。

3.出来事、特に最近の出来事に関する記憶(エピソード記憶)は忘れやすい。

4.計算能力は低下する。

5.結晶性知能は低下しにくい。

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