1.介護過程の意義

 

◆介護過程の意義と目的

介護過程は、利用者が望む「よりよい生活」「よりよい人生」を実現するという、介護の目的を達成するために利用者課題(生活課題)を介護の立場から系統的に判別し、解決するための計画を立て、実施し、評価する一連の過程をいう。介護過程は、問題解決アプローチである。介護過程を展開することにより、客観的で科学的な根拠に基づいた介護の実践が可能となる。

介護過程のプロセスは、専門知識や技術を統合して、アセスメント計画の立案実施評価の順に系統的な方法で行われる。

介護過程を展開する際には、下のような基本視点を重視する。

ICFの視点に基づく利用者像の把握
尊厳を守るケアの実践
個別ケアの実践
④生活と人生の継続性の尊重
生きがいや役割のある生活
⑥生活の自立支援
⑦他職種協働・連携
根拠に基づく介護実践と的確な記録

 

 

2.介護過程の展開

 

◆情報収集とアセスメント

 

アセスメント
アセスメントとは、介護の必要性を総合的に判断するために、利用者について「情報収集」「情報の解釈・関連付け・統合化」「課題の明確化」を行うことである。この段階は、専門的な知識や経験、判断が最も必要とされる。

 

インテーク
インテーク(受理面接)は、相談に訪れた人に対して、相談機関が行う最初の面接をいう。この面接を通して、相談者の訴えを傾聴し、情報を収集し、相談者が求めている援助と解決すべき課題を明らかにする。また、相談機関が提供できるサービスを説明し、相談者の要求に適合するかどうかを検討し、相談者がサービスを選択できるようにする大切な面接である。

 

アウトリーチ
アウトリーチは、手を伸ばすことを意味する。生活上何らかの問題を抱えながらも自ら支援を求めない。支援を拒否する、あるいは本人の意識に問題として顕在化していない利用者や地域社会に対して、援助者側から積極的に出向き、問題解決への動機づけを高めるように行う専門的援助をいう。社会福祉分野だけでなく、医療分野、科学技術分野、芸術分野などでも行われる活動である。

 

情報収集の方法

収集する情報には、その人のものの見方や考え方、期待等の主観的情報と他人が直接的に観察できる客観的情報がある。介護福祉士は、押しつけの介護にならないよう、主観的情報を常に確認する。また、これら2つの情報は、区別して記録する。
情報収集の方法は、まず、利用者に接しながら主観的情報を集める。プライバシーに配慮しながら、最初から無理にすべてを聞き出そうとしない。客観的情報は、身体の観察、行動の観察、家族や重要関係者、他職種、記録類等から集める。
情報収集を行うときは以下のような点に留意する。
①利用者の状態から正しく情報を得るために、観察力を身につける
②利用者の個別性を理解するために、先入観偏見をもたない。
③意図的に情報を収集し、情報の取捨選択をする(必要な情報を判断する)
④利用者の「できない」ことだけでなく、「できる」ことについても情報を収集する。
⑤多角的な視点で複数の情報を収集する。
⑥家族や重要関係者、他職種からの情報を収集するときは、あらかじめ利用者の了解を得ておく。

 

■課題の明確化
利用者の望む生活を実現または継続するために、利用者の課題(生活課題)を明確化する。そのためには、収集した情報を解釈し、関係性を明らかにしたうえで、顕在的課題のみならず、その要因と今後の予測を含めて判断する必要がある。
利用者の課題は、①顕在的課題(現在現れている課題)、②顕在的課題の要因、③潜在的課題(顕在的課題から予測される二次的課題)を含めて明らかにすることが重要である。例えば、「血管性認知症に起因する徘徊、無断外出があり、事故に遭遇する危険性がある」といったように表現することで、課題がより明確になる。

 

SOAP方式の記録
SOAPとは「Subjective Objective Assessment Plan」の略で、以下の4つの流れを指す。
(Subjective)
主観的な情報。つまり、利用者・家族等が訴えたことや、その時の事実のまま記載する。

(Objective)
客観的な情報。つまり、援助者の目で見たこと、聴いたこと、体験したこと。その事実だけを記載する。

(Assessment)
入手した客観的な事実、それに対する援助者の評価、課題分析をさす。客観的な情報に加味された援助者の専門的な判断結果をいう。

(Plan)
上記の事実、結果に基づいた計画の作成、あるいは必要な修正事項など。

以下に例を示す。
【S】
グループホームに入居している坂本さん(80歳、女性)が、「今日(ホームの)買い物の予定ある?なければちょっと散歩してきていい?」と外出の希望をスタッフに告げ、外出された。小銭の入っているバッグを持ってでかけられている。

【O】
スタッフ後追い。最寄のスーパーへ入られる。パックの日本酒を購入し、近くの公園を散歩した後に戻られる。

【A】
道中の歩行は安定している。見当識もしっかりしており、近距離の外出ならば問題ない。若いころにアルコール依存症の既往歴がある。家族がお小遣いとして来訪されるたびに1000~2000円を渡している。

【P】
外出希望がある時は、スタッフや他入居者と一緒に行くようにする。お酒の購入はできないようにスタッフが適宜声掛け対応する。お菓子などは自由に購入してもらう。

 

課題、目標

 

■課題
利用者に複数の課題がある場合は、優先順位を決定する。優先順位の決定にあたっては、①生命の安全、②生活の安定、③人生の豊かさの3つを参考にするとよい。
課題の優先順位の決定にあたっては、マズローの欲求階層説(こころとからのしくみで詳解)も目安となる。一般的に、下位の欲求ほど優先順位が高いと考えることができる。

目標
生活における目標の設定とは、利用者自らが自分の望む生活に向けて、一定期間に実現できることを段階的に進めていくことができるよう、意思決定をしていくことであり、利用者中心の視点でなければならない。
利用者を中心とする目標設定の留意点は、
個別的であること(一人一人の生活習慣や価値観を尊重する)
②利用者の自己実現を目指すものであること(家庭や社会への参加を可能にする。)
利用者自身が取り組むことができるものであること(能力を最大限に発揮する)

目標の書き方の留意点は、
①生活課題が介護によって解決されたとき、利用者がどのような行動(状態)になればよいかを利用者を主語として記述する。
②実施した介護を評価する基準となるように観察あるいは測定可能な表現にする。
③目標到達の時期を明記する。

目標は長期目標短期目標に分けられる。長期目標は、課題が解決した状況を表現する。短期目標は小さな一歩ずつの目標であり、課題を構成する成因部分と関係する。1つの課題には1つの長期目標があり、その課題に2つの成因があれば、短期目標は2つになる。目標は期限を明確にして、いつその期待される結果が現れるか、あるいは、いつその経過を評価するかを明確にしておく。目標と実態が合わないときは、目標の変更を検討する。

 

 

◆計画

利用者の望む生活を支えるために、利用者一人ひとりに対する介護計画生活継続の視点から作成する。介護計画の作成においては、利用者のADL、QOLを含めて総合的に考える必要がある。また、1人の利用者に複数の人(看護師、社会福祉士等)がかかわるチームアプローチを想定して、5W1H(※)を踏まえてより具体的・個別的に記述する。利用者本人や家族を中心に、利用者にかかわる人たち全員が共有できるようにしておくことが求められる。
※5W1H:
when(いつ)where(どこで)who(だれが)what(何を)why(なぜ)how(どのように)

計画のなかには観察内容を明示する。長期目標や短期目標が到達できたかどうかの評価の基準を明示することによって、目標の到達度を評価することができる。評価の基準が明らかにされていないと、実践した介護活動を客観的に評価し、計画を適切に修正することはできない。

ケアの標準化
組織が定める標準的なケアの方法・手順をマニュアル化し、業務手順として統一することであり、ケアの個別化とは、その標準的な方法に加え、さまざまな状態、ニーズをもつ利用者一人ひとりに応じた介護サービスを提供することをいう。

実施

実施は、介護過程のなかで中心となる部分であり、介護活動を計画に基づいて実際に行う段階である。この段階が適切に行われれば、利用者の課題は解決もしくは緩和し、利用者の生活の質の向上に資する。
実施においては、自立支援 ②安全と安心 ③尊厳の保持、の3つの視点を常に意識してかかわる必要がある。

 

評価
評価は、設定した目標について、利用者が到達できたかどうかという点から介護福祉職が責任をもって検討する。目標に到達していれば、介護過程は終了する。目標に到達していなければ、介護過程のプロセスを振り返り、評価・修正して、引き続き介護過程を繰り返していく。
評価において、「目標に到達していない」という結果が得られた場合、または到達していても「継続が困難である」と判断した場合は、計画の修正を検討する。目標に到達していない原因を明らかにすることにより、計画のどの部分を修正すればよいのか、再アセスメントを行う必要があるか、などが判断できる。