1.介護福祉士を取り巻く環境

◆介護の歴史

 

1874(明治7)年
恤救規則(じゅっきゅうきそく)(日本で初めて成立した貧困者に対する一般的な救済法であるが、公で保護する対象は、どうしてもそれがなければ生活できないものに限り、最低限の食料のみ保証するという、極めて限定的なものであった

1929(昭和4)年
救護法(制定の背景には世界大恐慌がある。恤救規則の扶助内容に医療・助産・生業扶助が加わり、恤救規則に比べてやや進歩がみられるが、被救護者からの選挙権はく奪など、課題も多かった)

★上記の恤救規則や救護法は制定されていたが、家族などの血縁関係や篤志家や宗教家による慈善事業を中心とした介護の時代(~1963年)

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1963(昭和38)年 ~老人福祉法制定~
老人福祉法により、特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホームが設置される。家庭奉仕員の派遣事業が法定化され、介護を主な業とする職種(資格制度もなく、まだ専門家とは言えない)が登場した。

★家族以外の非専門職による介護の時代(1963年~1987年)

※家庭奉仕:
低所得や家族の病気・障害、その他さまざまの理由によって、通常の日常生活を営むのに支障がある家庭を援助するサービスを行うことを任務とする人

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 1987(昭和62)年 ~社会福祉士及び介護福祉士法制定~
社会福祉士法及び介護福祉士法
が制定され、福祉の専門職としての社会福祉士と介護福祉士が誕生した。

専門職による介護が確立した時期(1987~1999年)
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2000(平成12)年 ~介護保険法施行~

介護の基本理念として「高齢者の自立支援」が掲げられた

自立支援としての介護の時期

2011(平成23)年 ~社会福祉士及び介護福祉士法の改正~

一定の研修を修了した介護福祉士や介護職員がその業務として喀痰吸引等を行うことが可能となった。

 

2016(平成28年)

 介護福祉士となるために医療的ケアを履修することが必須となる。そのため、介護福祉士の資格を取得した人はその業務として喀痰吸引等を行うことができる。

※医療的ケア…実施可能な行為は、喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と、経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)

 

 

◆介護問題の背景

 

1970年代に入ると、日本は高度経済成長により人口の都市化が進み、家族形態が変化し、小規模化の傾向が進み単身世帯高齢者世帯が増加していった。そのため介護を担う人員が少なくなり、家族による介護だけでは十分な対応が困難となった。
また、日本は1970(昭和45)高齢化社会(高齢化率7%)に、1994(平成6)高齢社会(高齢化率14%)になり、2007(平成19)超高齢社会(高齢化率21%)となった。2017(平成29年10月現在人口推計によると、日本の高齢化率は27.7%となり、4人に1人が高齢者という社会になっている。一方、1997(平成9)年に少子社会となり、少子高齢社会となった。

※高齢化率…総人口に対して65歳以上の高齢人口が占める割合

※高齢化定義…高齢化率7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」という

※少子社会…子どもの数が高齢者人口よりも少なくなった社会

 

■2018(平成30)年の「国民生活基礎調査」

国民生活基礎調査はよく設問や選択肢に使われるデータなので一度は目を通しておきましょう。
国民生活基礎調査「世帯数と世帯人員の状況」

●世帯構造
夫婦と未婚の子のみの世帯が 1485 万 1 千世帯(全世帯の 29.1%)で最も多く、次いで単独世帯が 1412 万 5 千世帯(同 27.7%)、夫婦のみの世帯が 1227 万世帯(同 24.1%)となっている。
世帯数増加傾向にある。

 

●高齢者世帯
65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満で未婚の者が加わった世帯のこと。「高齢者世帯」は 全ての世帯でみると、1406 万 3 千世帯(全世帯の 27.6%)となっている。

 

●65歳以上の者のいる世帯
65 歳以上の者のいる世帯は 2492 万 7 千世帯(全世帯 48.9%)となっている。「65歳以上の者のいる世帯」に絞ってみると、夫婦のみの世帯が 804 万 5 千世帯(65 歳以上の者のいる世帯の32.3%)で最も多く、次いで単独世帯が 683 万世帯(同 27.4%)、「親と未婚の子のみの世帯」が 512 万 2 千世帯(同 20.5%)となっている。65歳以上の者の「単独世帯」は増加傾向にある。

さらにそこから「高齢者世帯」に絞ってみると、単独世帯が 683万世帯(高齢者世帯の 48.6%)、夫婦のみの世帯が 664 万 8 千世帯(47.3%)となっている。

 

高齢者世帯の「単独世帯」(一人暮らしのお年寄り)
は 32.6%、は 67.4%となっており、女性の一人暮らしの方が多い。性別に年齢構成をみると、男は「65~69 歳」が33.8%、女は「75~79 歳」が 22.3%で最も多くなっている。

 

65歳以上の者の家族形態
65歳以上の家族形態は「夫婦のみの世帯」が38.9%で最も多く、次いで「子と同居」が38.4%となっており、65歳以上の者の子との同居率は5割を回っている。
性・年齢階級別にみると、年齢が高くなるにしたがって「子夫婦と同居」の割合が高くなっており、「単独世帯」「子夫婦と同居」の割合が高くなっている

 

●介護が必要となった主な原因を要介護度別にみると、要支援者では関節疾患が 17.2%で最 も多く、次いで「高齢による衰弱」が 16.2%となっている。要介護者では認知症24.8%で 最も多く、次いで脳血管疾患(脳卒中)が 18.4%となっている。
引用 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf

 

 

■介護の社会化
高齢者の介護が、家族の小規模化や老々介護などにより家族だけで介護を行うことが困難な状況になることを鑑み、国民に共通する介護のリスクを社会全体で分担し、必要なときに十分な介護サービスを利用できる社会の仕組みを構築し、社会全体で介護を支えていくことをいう。介護保険制度は、介護の社会化を図ることを目的としている。

※老々介護…高齢者が高齢者を介護すること

 

■2003年(平成15年)に2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~という報告書がまとめられた。その中で高齢者介護の基本理念は、介護保険制度が目指す「自立支援」と、その根底にある「尊厳の保持」とされた。

 

 

2.介護福祉士の役割と機能を支える仕組み

 

◆社会福祉士及び介護福祉士法

 

~社会福祉士及び介護福祉士法の成立までの流れ~

1986(昭和61)年
東京で行われた第23回国際社会福祉会議を契機に、福祉人材の資格制度が議論されるようになった。背景には、少子高齢化が急速に進み、高齢者世帯数が増加するなかで、人々の生活設計や生活パターンも変化し、高齢者、障害者(児)の福祉ニーズの多様化が進行したことがある。

※国際社会福祉会議…世界各国が社会福祉に関する情報交換や交流をするために開催される国際会議。主催は本部をウィーンにおく国際社会福祉協議会で、2年に1度開催される。

1987(昭和62)年
日本学術会議から、「社会福祉におけるケアワーカー(介護職員)の専門性と資格制度について」の意見が提出された。急速に進む高齢化社会のなかで、介護の科学化、社会化の必要性、異なった生活歴をもつ高齢者一人一人の状況によって、その自立への支援の必要性を主張し、資格制度として、高校卒業後2年の研修期間が必要である等の提言が行われた。

※日本学術会議…科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、1949(昭和24)年に内閣総理大臣所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立された。職務は次の二つで1.科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。2.科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。

1987(昭和62)年
国際社会福祉会議や日本学術会議の意見を背景に、サービスの倫理と質を担保する専門職の必要性について議論されるようになり、1987(昭和62)年社会福祉士及び介護福祉士法が制定された。

2007(平成19)年
社会福祉士及び介護福祉士法が改正され、介護福祉士の定義規定の見直しが行われた。介護福祉士とは、「登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう」となった。

2011(平成23)年
社会福祉士及び介護福祉士法の見直しが行われた。介護福祉の業に「喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定められるものに限る)を含む。」が加えられた。

※施行は2016(平成28)年
※介護福祉士が医療的ケア(喀痰吸引等)を実施するためには、基本研修(実時間で50時間以上)と演習を修了後、実地研修を修了し、実地研修修了証の交付を受ける必要がある。実地研修は都道府県に登録した登録研修期間や実地研修施設で実施される。

 

介護福祉士に求められる義務

信用失墜行為の禁止
介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

秘密保持義務
正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。介護福祉士でなくなった後においても、同様とする

連携
その業務を行うに当たっては、その担当する者に、認知症であること等心身の状 況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。

上記3つに加えて2007(平成19)年の社会福祉及び介護福祉士法の改正により新たに二つ規定された。

誠実義務
その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実にその業務を行分ければならない。

資質向上の責務
介護を取り巻く環境の変化による業務内容の変化に適応するため、介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

 

名称独占と業務独占

名称独占:
国家資格において、登録による有資格者だけがその名称を用いることがでる法的規制

業務独占:
国家資格を取得した者がその根拠法で定められた業務を独占すること。

介護福祉士は名称独占である。これに対して例えば医師は名称独占であると同時に、資格免許がなければその業務を行うことが禁じられている業務独占である。

 

■介護福祉士の義務規定違反と罰則

義務規定

罰則

秘密保持義務

登録の取り消し、または期間を定めて介護福祉士の名称の使用の停止

1年以下の懲役または30万円以下の罰金

名称の使用制限

30万円以下の罰金

信用失墜行為の禁止

登録の取り消し、または期間を定めて介護福祉士の名称の使用の停止

 

 

介護福祉士の登録
介護福祉士となる資格を有する者が介護福祉士になるには、厚生労働省に備える介護福祉士登録簿に、氏名、生年月日などの登録を受けなければならない。介護福祉士の登録者数は、2016(平成28)年3月末で140万8533人となっている。

 

介護福祉の欠格事由
①成年被後見人または被保佐人

②禁固刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しないもの

③この法律の規定その他社会福祉又は保険医療に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しないもの

④規定により介護福祉士の登録を取り消され、その取り消しの日から起算して2年を経過しないもの

 

 

 

 3.尊厳を支える介護

 

尊厳を支えるケア
日本国憲法では、第11条で基本的人権を尊重することが根本的な原理として定められている。また、第13条で幸福追求権、第25条で生存権を規定している。
介護従事者は利用者の人権擁護に努めなければならない。基本的人権とは人が人であれば当然持っている普遍的な権利である。憲法の規定する権利ほのかに、自分の権利を知ること、意見表明権、自己選択・自己決定権、知る権利、プライバシー権等があげられる。
介護福祉士は、利用者の自立支援や生活の質の向上だけではなく、尊厳のある生活(ROL)を守り、人生の総仕上げを支援する役割も担っている。

※ROL:Respect of Living

 

■尊厳の保持が明記されている法律

社会福祉法

介護保険法(2005(平成17)年の改正以降)

高齢者虐待防止法

障害者基本法

社会福祉士及び介護福祉士法

生活困窮者自立支援法

 

QOL
生活の質などと訳される。一般的な考え方は、生活者の満足感、安心感、幸福感を規定している諸要因の質をいう。介護福祉士は利用者の自立的な生活を拡大し、生活の質を高める必要がある。

 

利用者主体
利用者の主体性を尊重するためには、利用者が自己決定できるように支援する。そのためには、利用者の知る権利を守り、利用者が選択決定を行うことができるようにする必要がある。

 

 

 

 4.自立に向けた介護

 

◆自立支援

 

自立とは
「現状の個人的・環境的条件ものとで、自身の生活(衣食住、仕事etc)を自らの意志で選択し生活設計をすること。」前提に自律(他からの支配や制約を受けずに自分自身で立てた規範に従って行動すること)がある。自立を現実的、効果的に達成するには、自分で立てた規範に従って、自分のことは自分で決めていくという精神的自立が求められる。

自立生活の支援を行うためには
利用者がどこまで自分でできるかを確かめて、手を出すよりも忍耐強く見守り、利用者の有する能力を活用することが大切である。介護者は利用者のできない部分を手助けするのが基本である。

 

エンパワメント・アプローチ
利用者の持っている力に着目し、その力を引き出して積極的に利用、援助することをいう。

 

強さ志向の視点(ストレングスパースペクティブ)
これまでの医学モデルに基づいて利用者の病理や弱さを突きとめて治療を施すあり方を脱却し、エンパワメント・アプローチのように利用者の健康や強みを重視する考え方

個別ケア
利用者には、一人ひとりの思いがあり、人生の歴史がある。個別ケアという言葉には、実際的な介護場面での「個別的な介護技術」(例えば、右片麻痺の方の車いすへの移乗の仕方等)と、一人ひとりの人生の歴史を踏まえた「個別的な生活支援」(例えば、食事は入浴後にとることにしている等)という2つの意味が含まれている。

 

 

 

◆ICF

 

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)

国際生活機能分類と訳されている。個人の情報(健康状態、家族関係、趣味、病歴etc)の整理の仕方というイメージで差支えない。
ICFの目的を一言で言えば、「“生きることの全体像”を示す“共通言語”」である。生きることの全体像を示す「生活機能モデル」を共通の考え方として、さまざまな専門分野や異なった立場の人々の間の共通理解に役立つことを目指している。
具体的には次のような目的に用いられる。

・健康や生活環境に関する共通言語の確立で、様々な関係者間(例えば病院と介護施設)のコミュニケーションを改善

・国、専門分野、サービス分野、立場、時期などの違いを超えたデータの比較

・健康に関する状況、健康に影響する因子を深く理解するため

 

ICFでは健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子の各要素を約1500項目に分類し、それぞれが相互作用していると考える。

具体的に見てみると、心身機能の項目は

「心身機能」

1 精神機能
2 感覚機能と痛み

8 皮膚及び関連する構造の機能

と8項目に分けられ、さらにそのひとつひとつの項目が

8-1 皮膚の保護機能
8-2 皮膚の修復機能

というような具合にさらに細かく分類されている。

介護福祉士国家試験では細かい分類まで記憶する必要はない

生活機能とは、ICFの中心概念であり、人が「生きる」ことの3つのレベルである、

①心身機能・身体構造
②活動
③参加

の3つを包括した概念である。
3つのレベルの内容は次の通りである。

心身機能・身体構造(生物レベル、生命レベル)
生命の維持に直接関係する、身体・精神の機能や構造で、これは心身機能と身体構造とを合わせたものである。心身機能とは、たとえば手足の動き、精神の働き、視覚、聴覚、内臓の働きなど。身体構造とは、手足の一部、心臓の一部(弁など)などの、体の部分のこと。また、「心身機能・身体構造」に問題が生じた状態を機能障害(構造障害も含む)としている。

具体例)
・左半身筋力低下 
・毎晩目つぶしをされるというような妄想がでてくる

活動(個人レベル、生活レベル)
生活行為、すなわち生活上の目的を持ち、一連の動作からなる、具体的な行為のこと。これはあらゆる生活行為を含むものであり、実用歩行やその他のADL(日常生活行為)だけでなく、調理、掃除などの家事行為、職業上の行為、余暇活動(趣味やスポーツなど)に必要な行為、社会生活上必要な行為がすべて入る。またICFでは「活動」を「できる活動」(能力)「している活動」(実行状況)との2つの面に分けて捉える。活動に問題が生じた状態は活動制限としている。

具体例)
・入浴は自宅で一部介助
・外出時はシルバーカーを使用して移動

参加(社会レベル、人生レベル)
家庭や社会に関与し、そこで役割を果たすことである。社会参加だけではなく、主婦として、あるいは親としての家庭内役割であるとか、働くこと、職場での役割、あるいは趣味にしても趣味の会に参加する、スポーツに参加する、地域組織のなかで役割を果たす、文化的・政治的・宗教的などの集まりに参加する、などの広い範囲のものが含まれる。参加に問題が生じた状態は参加制約としている。

具体例)
・施設で毎朝のゴミ捨てを担当している。
・毎年地域の祭りに参加している。

 

環境因子
「環境因子」というと、建物・道路・交通機関・自然環境のような物的な環境のみを考えがちであるが、ICFはそれだけでなく、人的な環境(家族、友人、仕事上の仲間など)、態度や社会意識としての環境(社会が生活機能の低下のある人をどうみるか、どう扱うか、など)、そして制度的な環境(医療、保健、福祉、介護、教育などのサービス・制度・政策)と、ひろく環境を捉える。

具体例)
・長女夫婦が近所に住んでいる
・生活保護を受けている

 

●個人因子
その人固有の特徴をいう。これは非常に多様であり、ICFではほかの要素のようにまだ分類できていない。年齢、性別、生活歴(学歴、職歴、家族歴など)、価値観、などの例が挙げられている。「個人因子」は「個性」というものに近いものであり、医療でも福祉でも、職業、教育、その他でも、患者、利用者、生徒などの個性を尊重しなければいけないということが強調されている現在、重要なものである。

具体例)
・未婚(こどもなし)
・着物の着付けが得意
・年齢、性別

ICFでは、ほとんどすべての要素が上図のように双方向の矢印で結ばれており、1つの要素が変化するとその他の1つまたは複数の要素を変化させる相互関係が存在する。影響の仕方にはマイナスの影響もあればプラスの影響もある。例えば、環境因子の例として、点字ブロックは目の不自由な人にとってはプラスの効果があっても、歩行困難のある人にはマイナスになることもある。この影響の与え合いの内容・程度は一人一人違うのであり、どの要素がどの要素に影響しているのかを具体的にとらえることが重要である。

参考程度に具体例を以下に示す。

具体例1

 

具体例2

 

■ICIDH

ICIDH(国際障害分類は、障害を3つの次元で整理している。機能障害とその結果生じた機能面の制約である能力障害、さらに能力障害により社会的関係のなかで権利が侵害されているという社会的不利が生じるとされた。

ICIDHの3つの次元には明らかな区別があり、病気・変調機能障害能力障害社会的不利いった図式が、障害のある人の問題を論じるときの根拠となっていた。この概念は、障害のある人の状態のマイナス面を強調することになり、機能障害があれば必ず能力障害が生じ、それが社会的不利につながる、というような一方向的な図式になって、現実にそぐわない面があった。例えば、盲目であるが世界的に有名なピアニストになった人もいる。

そこで生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、環境因子個人因子の観点を加えたICFが登場した。

ただし、ICFはICIDHの上位互換というわけではない。病気やケガを治療することが主目的の医療の現場などではICIDHでまとめられた情報のほうが使いやすい場合もある。

 

■医学モデルと社会モデル
障害に対する見方として医学モデル社会モデルがある。医学モデルは、障害を個人の問題としてとらえ、ICIDHにあるように病気や外傷等の健康状態から生じると考え、専門家による治療で回復させることを目標としてきた。一方、社会モデルは、障害は主として社会(環境)によってつくられた人権問題や政治的な問題とみなし、障害のある人の社会への完全参加と環境の変更を目標としてきた。

医学モデルと社会モデルは対照的で、従来対立するモデルとして考えられていたが、ICFでは二つのモデルを統合したアプローチを提案している。

 

 

 

◆リハビリテーション

 

■WHOは、1981年に「リハビリテーションは能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる」と定義した。リハビリテーションは、人間としてふさわしい権利の状態に回復する全人間的復権を目指している。

加齢や疾病により心身の機能低下が生じた高齢者や障害者では、生活の自立が困難になるとともに、活動性が低下しやすくなる。その結果、さらに心身機能の低下を招くといった悪循環に陥りがちである。そこで残存機能を活用して心身の機能水準を維持・向上させ、心身機能や環境に適した生活を再獲得するリハビリテーションの視点が重要となる。

現在では、医学の視点に基づくリハビリテーションだけではなく、日常生活面への援助や生きがいづくりの働きかけなど、介護の視点に基づくリハビリテーションも求められている。

※全人間的:
人を、身体や精神などの一側面から見るのではなく、人格や社会的地位なども含めた総合的な観点から取り扱うさま。

 

■ADLとIADL

ADL(日常生活動作)
ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的なしかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体動作群

具体例)
食事、排泄、更衣、入浴、移動、コミュニケーション、整容など

IADL(手段的日常生活動作)あるいはAPDL(生活関連動作
ADLより広く応用的な活動

具体例)
炊事、洗濯、整理整頓、買い物、服薬、金銭管理、交通機関の利用など

 

■リハビリテーション医学と医学的リハビリテーション
リハビリテーション医学は、身体的な運動機能の障害などの軽減回復を図るものである(世間一般でイメージされているリハビリ)。これに対し医学的リハビリテーションは、リハビリテーション医学を含むより広い概念で、障害のある人々に対応した全人間的復権の医学およびサービスをいう。

 

■教育的リハビリテーション
教育的リハビリテーションとは、障害のある幼児、児童・生徒の自立や社会参加を促すための教育的支援である。学校教育法に基づく特別支援教育による分離教育だけでなく、人種、国籍、不登校、虐待などの特別なニーズをもつあらゆる子どもに対する統合教育(インテグレーション)が普及しつつある。

 

■職業リハビリテーション
職業リハビリテーションとは、職業指導、職業訓練、職業選択などの職業的なサービスの提供を含んだ、継続的、総合的なリハビリテーションの一部であって、障害者の適切な就職の確保と継続ができるように計画されたもの

 

■社会リハビリテーション
社会リハビリテーションとは、家族関係、住宅、地域、行政、法律、経済、教育・文化、公共機関、建築設備、交通機関などの社会システム、インフラで、高齢者や障害者にとって社会参加の壁になる要因を減少させ、社会参加を可能とするアプローチ

 

■地域リハビリテーション
地域リハビリテーションとは、高齢者や障害者に対する地域の社会資源、援助、理解を通じた地域ぐるみの対応であり、家族とともに地域の人々が障害者とかかわりをもって生活していく対応策

 

■リハビリテーションは、急性期、回復期、維持期で役割が分担されている

急性期リハビリは、病気やケガなどで運び込まれた病院で、「現状より悪くしない」ことを目的としたリハビリ。
急性期のリハビリを終え、ある程度身体を動かすことができるようになったら、回復期リハビリに移行します。この時期のリハビリは、リハビリ専門病院などで行われ、機能が低下している部分の回復、場合によっては麻痺していない健康的な半身を用いた日常生活を行うための機能訓練を目指すことが主な目的となる。
回復期リハビリを終え、退院後は、自宅や地域の施設などで行う維持期リハビリになる。日常動作を維持することが大切な目的であり、併せて服薬や生活改善など再発を防止する観点も重要になる。

 

 

 

 5.介護を必要とする人の理解

 

◆人間の多様性・複雑性の理解

 

人はその生活経験に裏付けられた習慣、文化、価値観をもち、多様である。特に成人以降の場合、それらの価値観や志向は確立されており、環境の変化に対応するのは大変である。介護福祉士はこの個別性を理解し、その人らしく生活できるような個別ケアの実現に努力する必要がある。

 

◆高齢者のくらしの実際

 

 

■2016(平成28)年度の高齢者の経済・生活環境に関する調査より

調査項目

最も多いもの/割合

経済的な暮らし向き

心配はない(64.6%)

大きな割合を占める支出

食費、光熱水費(75.6%)

負担を感じている支出

食費、光熱水費(50.9%)

貯蓄の目的

万一の場合の備えのため(47.5%)

日常的な介護の対象

介護はしていない(87.9%)

家族・親族の介護を担う中での思い

介護に対する限界を感じる、投げ出してしまいたくなる(32.5%)

日常の買い物の仕方

自分でお店に買いに行く(75.9%)

買い物に行くときの主な手段

自分で自動車等を運転(55.6%)

住んでいる地域での社会的活動状況

特に活動はしていない(69.9%)

 

 

■2012(平成24)年度の高齢者の健康に関する意識調査より

調査項目

最も多いもの/割合

健康状態についての意識

良い(5割以上)

日常生活についての満足度

満足している(約9割)

生きがい

感じている(約8割)

退職希望年齢

働けるうちはいつまでも

65歳を超えても働きたい人の割合

6

最期を迎えたい場所

自宅

自分が延命医療を受けたい人

5

家族に延命医療を受けさせたい人

15

行政に力を入れてほしい健康管理

認知症

介護を受けたい場所

自宅

介護を頼みたい相手

配偶者

 

 

■2013(平成25)年度の高齢者の地域社会への参加に関する意識調査より

調査項目

最も多いもの/割合

生きがい

感じている(約8割)

生きがいを感じるとき

孫など家族との団らんの時

仕事をしたいと思う年齢

働けるうちはいつまでも

参加したい活動

健康・スポーツ

活動に参加してよかったこと

親しい友人を得ることができた

参加したい学習活動

カルチャーセンターなどの学習活動(約2割)

参加している学習活動

カルチャーセンターなどの学習活動

(約1割)

若い世代との交流への参加意向

約6割

若い世代との交流への参加状況

約4割

 

 

■2014(平成26)年の「患者調査」より
全国の医療施設での受療患者数は、入院が132万人、外来が724万人で、65歳以上が入院の約7割、外来の約5割を占める

 

■2016(平成28)年度の「国民生活基礎調査」より
引用:厚生労働省

2008(平成18)年以降、高齢者世帯における1世帯あたりの平均所得金額300万程で横ばいである。

高齢者世帯
65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満で未婚の者が加わった世帯

 

引用:厚生労働省

2016(平成28)年度の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の所得の状況は公的年金・恩給65.4%(201万6千円)、稼働所得21.1%(65万円)となっている。また、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のなかで公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯つまり公的年金・恩給に100%頼っている世帯は54.1となっている。

稼働所得:
働いて得たお金

■レクリエーション

レクリエーションは楽しさや心地よさをはぐくむ活動や参加を通じて人間性の回復を図る。要介護高齢者のレクリエーション援助で重要なことは、要介護高齢者と介護者との関係を安定させながら、レクリエーション財といったプログラム活動と利用者同士の仲間関係により、QOLの向上を目標に置くことである。
高齢者福祉領域におけるレクリエーションは、元気な高齢者などの老人クラブ活動のみならず、機能訓練の一環としてのレクリエーションや介護保険の要支援・要介護高齢者を対象としたレクリエーションも含む。

 

 

◆介護を必要とする人の生活環境の理解

 

2016(平成28)年度の国民生活基礎調査によると
引用:厚生労働省

介護が必要となった主な原因を要介護度別にみると、要支援者では関節疾患が 17.2%で最 も多く、次いで「高齢による衰弱」が 16.2%となっている。要介護者では認知症 24.8%で 最も多く、次いで脳血管疾患(脳卒中)が 18.4%となっている。

 

引用:厚生労働省

主な介護者(熊本県を除く。)をみると、要介護者等と同居58.7%で最も多く、次いで 「事業者」が 13.0%となっている。 「同居」の主な介護者の要介護者等との続柄をみると、「配偶者」が 25.2で最も多く、次いで「」が 21.8%、「子の配偶者」が 9.7%となっている。 また、「同居」の主な介護者を性別にみると、男 34.0%、女 66.0%で女性が多く、これを年齢階 級別にみると、男女とも「60~69 歳」が 28.5%、33.1%と最も多くなっており、過半数60歳以上となっている。

 

■エコマップ
エコマップとは、支援を要する家族を中心として、その家族の問題や解決に関わると考えられる関係者や関係機関を記載したものである。これらを図式化することにより、全体の関係性を簡潔に把握することができ、各機関の役割を検討することに役立つ。

 

 

 

 

6.介護サービス

 

◆介護サービスの概要

 

■介護サービスにはフォーマルサービス(社会的サービス)インフォーマルサービス(私的サービス)が存在する。

フォーマルサービス
公的・民間・NPOによるサービス。介護保険法、老人福祉法、障害者総合支援法等に基づき、サービス事業者の指定を受けて介護サービスを提供する。

インフォーマルサービス
家族・親族、ボランティア等による介護などのサービス

 

■ケアプラン
介護保険やその他のサービスを利用するためには、ケアプラン(介護サービス計画)を作成する必要がある。ケアマネジャーが作成することがほとんどであるが、利用者自らケアプランを作成することもできる

ケアプランは大きく分けると居宅サービス計画」「施設サービス計画」「介護予防サービス計画の3種類がある。市区町村の調査によって要介護度が認定され、そのレベル(要支援1~2、要介護1~5)によって利用できるケアプランも異なる。

居宅サービス計画
自宅でのサービスを中心に受けられるように検討されたケアプラン。自宅で受ける訪問介護のほか、通所で受けるデイサービスなどがある。

施設サービス計画
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの施設でサービスを受けられるよう検討されたケアプラン

介護予防サービス計画
まだ介護を必要としない健康な人が、今後介護が必要な状態にならないようにサポートを受けるためのケアプラン。

 

◎ケアプランの作成・変更時、要介護認定更新時、要介護認定区分変更時、継続して福祉用具を利用する場合には原則としてサービス担当者会議の開催が義務付けられている。

サービス担当者会議は、基本的に利用者家族すべてのサービス提供事業者が参加し、利用者・家族の意向の確認や事業所から専門的意見を求め、ケアプランの修正や最終決定をする場となっている。

ケアプランは利用者が本当に望んでいる介護サービスを受けられるようにするためにとても大事なものである。ケマネジャーや事業者にすべて任せるのではなく、利用者やその家族もしっかりと考える必要がある。

 

■介護サービス計画(ケアプラン)と介護計画(個別援助計画)
間違いやすいがこの二つは別物である。介護サービス計画(ケアプラン)は、サービスや援助の方向性を決めるチーム全体の計画であり、ケアマネジャーが中心となって作成する場合がほとんどである。一方、介護計画(個別援助計画)はケアプランをもとに、利用者ひとりひとりに提供される援助内容を示すもので、介護福祉士や、訪問看護師などの各々の専門職が独自に具体的な援助方針や実施内容を作成する。ただし、ケアプランに反する内容のものは記載できない。あくまでケアプランに沿って作成しなければならない。一本の木でイメージするとケアプランは幹で個別援助計画が枝や葉というような感じである。

ケアプランと個別援助計画は互いに連動しているものなので、ケアプランに修正が生じた場合は、必ずサービス担当者会議やカンファレンスの場で報告しなければならない。

 

 

■ケアマネジメントの過程
ケアマネジメントは、アメリカやカナダにおける精神保健プログラムや老人福祉分野で取り入れられた方法である。自ら制度を利用することが困難な状態にある利用者に、適切な時期に適切な状態で、必要とするすべてのサービスを受けられるように各サービスの調整(コーディネート)を図ることを目的としたものである。

ケアマネジメントは一般的に、下図の過程をたどる。ケアプランの作成にあたっては、利用可能なさまざまなサービスだけでなく、家族・親族や地域住民からの援助についても考慮する必要がある。

スクリーニング
ふるいにかけて条件に合うものを選び出すことで、ケアマネジメントの過程では、利用者あるいはその家族からの相談や調査・聞き取りから単純な問題、複数の複雑な問題、緊急対応が必要な問題の3種類に分類する場面などの意味として用いられる。

インテーク
最初の面接・相談

 アセスメント
介護福祉分野におけるアセスメントとは、利用者のニーズ、課題、可能性を把握するために、さまざまな情報を収集・分析すること。

 

モニタリング
モニタリングとは、ケアプランに位置付けた目標の到達に向けて、①計画通りに支援が実施されているか、②目標に対する到達度はどうか、③サービスの種類や支援内容・支援方法は適切か、④利用者に新しい課題や可能性が生じていないか、⑤サービスの質と量に対する利用者・家族の満足度はどうかを確認することである。

モニタリングは継続的に利用者やサービス担当者などと連絡をとりあい、居宅サービスの場合は少なくとも月に一回、利用者の居宅を訪問し、利用者と面接する。そして、モニタリングの結果も、少なくとも月に一回は記録する。

 

援助の終結
援助の終結の条件としては次の4つがあげられる。

①課題が利用者の力によって解決された。
②課題が解決されたことについて、援助者と利用者の判断が一致している。
③今後いくつか解決すべき課題はあるものの、その解決は利用者が自ら対応できる。
④援助者と利用者の間で①~③のことが共通理解となっている。

 

 

◆介護サービスの種類

 

■介護サービスでは、省令の「運営基準」で、各種サービスの「提供拒否の禁止」が規定されており、「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」と明記されている。提供を拒む正当な理由には、居宅サービスでは現員数通常の事業の実施地域外である場合、施設サービスでは現員数入院治療の要否が主に該当する。

※現員数:定員に対する現在の利用者数

以下の画像は介護サービスをうけるまでの流れをまとめたものである。

まずは要介護1~要介護5の人が受けることのできるサービス(赤線で囲んでいる部分)を詳しくみていく。大きく分けると都道府県が指定・監督を行うサービス(居宅サービス、施設サービス)市町村が指定・監督を行うサービス(地域密着型サービス、居宅介護支援)の4つである。

 

◆居宅サービス

 居宅における介護では、安全で正確な介護技術を踏まえたうえで、利用者の望む生活や価値観、人生観に沿う援助が求められる。具体的には、以下の点に留意しながら援助を進める。

・利用者の生活経験や価値観を知る。
・機能障害や残存機能を把握する。
・本人や家族の思い、家族の介護負担の現状を知る。
・住環境、経済環境、地域の社会資源、医療関係者との連携のあり方を確認する。
・利用者、介護者にとって使いやすい福祉用具の情報提供を行う。

 

訪問介護(ホームヘルプサービス)
生活援助サービスと身体介護サービスに分けられている。対象者は居宅の要介護者(要介護1~5)であり(老人福祉法に規定している軽費老人ホーム、有料老人ホーム、養護老人ホームにおける居室を含む)、居宅サービス計画(ケアプラン)に基づくサービスが提供される。訪問介護の提供にあたっては、個別援助計画として訪問介護計画を作成し、その内容について利用者またはその家族に対して説明し、同意を得なければならない。

生活援助サービス
掃除、調理、洗濯などの日常生活の援助である。介護保険制度の生活援助で介護給付費が支給されるのは、利用者が単身の世帯に属している場合かまたは家族等の障害、疾病などの理由により、利用者や家族等が家事を行うことが困難な場合とされている。不適切事例としては、家具・電気器具の移動、掃除、草むしりなどがある。比較的軽度の人ほど生活援助サービスの利用の比重が高い。予防的観点からも一緒に作業をすることで、自立に向けた支援をすることが大切であり、食事を作ってあげる、掃除をしてあげるというような“お手伝いさん”にならないように注意しなければならない。

身体介護サービス
食事、排泄、入浴、衣服の着脱、移動、身体整容、通院介助等の援助で、比較的重度の人ほどサービス利用の比重が高くなっている。

 

 

訪問入浴介護
居宅で介護を受ける要介護者の居宅を訪問し、浴槽を提供して行われる入浴の介護

引用:http://www.misaki.rdy.jp/illust/hukushi/text/nyuyoku6.htm

 

訪問看護
居宅要介護者(主治医が病状が安定期にあり、居宅において療養上の世話等が必要であると認めたものに限る)の居宅において看護師、保健師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士により行われる療養上の世話または必要な診療の補助。

 

訪問リハビリテーション
居宅要介護者(主治医が、病状が安定期にあり、居宅において、医学的管理の下における理学療法等が必要であると認めたものに限る)の居宅において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションをいう。病院、診療所に加えて、介護老人保健施設も訪問リハビリテーションを行うことができる。

 

居宅療養管理指導
居宅要介護者について、病院、診療所または薬局の医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士、医療機関や訪問看護ステーションの保健師、看護師、准看護師などにより行われる療養上の管理および指導等。

 

通所介護(デイサービス)
居宅要介護者について、特別養護老人ホーム、養護老人ホームおよび老人福祉センター等の施設または老人デイサービスセンタ―に通わせ、当該施設において入浴、排せつ、食事等の介護、生活等に関する相談および助言、健康状態の確認その他必要な日常生活上の世話、並びに機能訓練を行う。生活障害を改善し、日常生活の活性化に貢献する。また、家族の介護負担の軽減という効果もある。なお、単に「通所介護」という場合、認知症対応型通所介護に該当するものは含まれない。

通所介護では、個別援助計画である通所介護計画を作成し、個別ケアを実践する。通所介護計画作成のためには、ケアマネジャーが作成した居宅サービス計画(ケアプラン)から、利用者が通所介護に何を求めているのかを明確に把握する必要がある。

 

 

通所リハビリテーション(デイケア)
居宅要介護者(主治医が病状が安定期にあり、施設において医学的管理の下における理学療法等が必要であると認めたものに限る)について、介護老人保健施設、病院、診療所に通わせ、利用者の自立に向けた心身機能の回復を図る。また、軽度要介護者の重度化を予防し、現在の状態を維持できるようにしていく。

 

ショートステイ
居宅要介護者が数日~1週間くらいの短期で特別養護老人ホームや介護老人保健施設等の施設やショートステイ専門の施設に入所できるサービス。在宅で介護をしている人がどうしても家を空けなければならないとき、介護を休みたいときなどに便利なサービスである。

ショートステイには大きく分けて短期入所生活介護と短期入所療養介護の二つがある。

短期入所生活介護
食事や入浴、排泄といった生活介護と機能訓練が受けられる福祉的サービス。宿泊できるデイサービスのようなもので、介護職員のほかにも、機能訓練指導員が配置されているため、機能訓練やレクリエーションが受けられる。短期入所生活介護を受けられる主な施設は、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどの介護老人福祉施設である。

 

短期入所療養介護
リハビリテーションや医療ケアなどの医療サービスを受けられるショートステイ。短期入所生活介護と同じく、食事や入浴、排泄などの生活介護サービスもある。介護職員はもちろん、看護師や医師、リハビリテーションを行う理学療法士や作業療法士などが配置されている。サービスを受けられる主な施設は、介護老人保健施設などである。

 

 

特定施設入居者生活介護
有料老人ホーム、軽費老人ホーム等に入所している要介護者等について、その施設で、入浴、排泄、食事等の介護、生活等に関する相談、助言等の日常生活上の世話、機能訓練および療養上の世話を行う。

特定施設は何かについて以下で詳細に説明する。

特定施設とは、①有料老人ホーム軽費老人ホーム養護老人ホームの3つ。定員が30人以上で都道府県から居宅サービスの特定施設入居者生活介護の事業者指定をうけたもの。

有料老人ホーム
老人福祉法に規定された居住施設で、以下の4つの類型がある。

介護付有料老人ホーム(内包型職員によるケア:介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設。介護サービスは有料老人ホームの職員が提供する。)

介護付有料老人ホーム(外部サービス利用型:介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設。有料老人ホームの職員が安否確認や計画作成等を実施し、介護サービスは委託先の介護サービス事業所が提供する。)

住宅型有料老人ホーム(生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設。介護が必要になった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら当該有料老人ホームの居室で生活を継続できる)

健康型有料老人ホーム(食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設。介護が必要となった場合には、契約を解除して退去しなければならない。)

 

軽費老人ホーム
老人福祉法に規定された老人福祉施設。
家庭での日常生活に近い環境で、最低限の生活支援サービスを受けながら、自立した生活を送ることができる住居。食事サービスのあるA型、食事サービスのないB型、食事サービスがあり、介護が必要になった場合に、介護保険の居宅サービスが受けられるC型(ケアハウス)の3種類があるが、2008(平成20)年度からケアハウスの基準を標準化して一元化された。

2010(平成22)年度からは、都市部において居室面積や職員配置基準の特例を設けて利用料の低廉化を図った都市型軽費老人ホーム(定員20人以下)が設立できるようになった。

 

養護老人ホーム
老人福祉法に規定される経済的、社会的理由により地域で生活を維持、継続できない人のための福祉施設である。もともとは介護を必要としない自立した65歳以上の高齢者で低所得などの原因によって自宅で生活ができないなどの経済的理由を持つ方が入所対象であったが、2005年の介護保険制度改正で特定施設の指定を受けることができるようになった。ただし、介護サービスは外部のサービス利用を前提としている。

 

 

福祉用具貸与
居宅要介護者について行われる福祉用具(心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具および要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの)のうち厚生労働大臣が定めるものの貸与。

 

特定福祉用具販売
居宅要介護者について行われる、福祉用具のうち入浴または排泄に関するものその他の厚生労働大臣定めるものの販売。

福祉用具貸与と特定福祉用具の種目は下表

福祉用具貸与

特定福祉用具販売

車いす

腰掛便座

車いす付属品

自動排泄処理装置の交換可能部品

特殊寝台

入浴用椅子

特殊寝台付属品

浴槽用手すり

床ずれ防止用具

浴槽内椅子

体位変換器

入浴台

手すり

浴室内すのこ

スロープ

浴槽内すのこ

歩行器

入浴用介助ベルト

歩行補助杖

簡易浴槽

認知症老人徘徊感知器

移動用リフトのつり具の部分

移動用リフト(つり具の部分を除く)

 

自動排泄処理装置

 

※自動排泄処理装置

自動的に便や尿を吸引する福祉用具のひとつ。尿意を感じてから立ち上がってトイレに行くまでに時間がかかり失禁してしまうケースや、転倒などの不安があり夜間に起き上がってトイレまで歩くことに抵抗がある場合など、排泄動作に不自由のある高齢者に利用される。

 

※移動用リフト
自力で移動できない人の身体をつり上げ、ベッドから車いす、トイレ、浴室などとの移動を補助するもの。

※特定福祉用具販売は「入浴または排泄に関するもの」であるが「自動排泄処理装置」は福祉用具貸与にはいるので注意しなければならない。

 

 

 

 

◆施設サービス

 

介護保険施設、介護老人福祉施設、介護老人保健施設など似たような名称でわかりにくいものが多いため、施設サービスを説明する前に、まず覚えておかなければならない名称と内容を整理しておく。

特別養護老人ホームと介護老人福祉施設

これら二つの違いは、設置の根拠となる法律が違うというだけで、実は同じものを指している。

老人福祉法では「特別養護老人ホーム

介護保険法では「介護老人福祉施設

つまり、名称が違うだけで実質的には介護老人福祉施設特別養護老人ホームということになる。

ただし、介護保険法の施設サービスを使うためには特別養護老人ホームとして認可されている施設が都道府県知事に申請し、介護保険法上の指定を受けなければならない。

 

■介護老人保健施設と介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の違い

介護老人保健施設

介護保険法を設置の根拠法とする介護保険施設。慢性期、維持期にある治療を要する状態ではない高齢者で退院後すぐに在宅生活を送ることが難しい場合の中間施設として位置づけられている。在宅復帰に向けたリハビリテーションなどを行い、生活の再構築を支援する施設である。

介護老人保健施設の人員は、医師(常勤)看護・介護職員、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士、介護支援専門員、支援相談員等の配置基準が定められているが、リハビリテーションの専門職である理学療法士(PT)作業療法士(OT)または言語聴覚士(ST)必置としているのは、介護保険施設のなかでは介護老人保健施設のみである。

 

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

老人福祉法を設置の根拠法とする施設。高齢による身体・精神の著しい障害のため、常時の介護を必要とする高齢者のうち、居宅で介護を受けることが難しい人のための施設で、原則として要介護3以上の高齢者が入所することができる。ただし、要介護1・2でも、単身世帯等家族の支援が見込めず地域の介護サービスの供給が不十分であるなど、一定の場合には入所可能。市役所などに設置されている入所検討委員会が決定する。

介護老人保健施設在宅復帰を目的としているため、整った医療体制のもと、医療ケアや充実したリハビリを受けることができる。一方、要介護度の高い人を優先的に受け入れる特別養護老人ホームは、日常生活の介護サービスを基本としているため、食事や入浴、排泄などの介助、掃除や洗濯などの生活援助が主になる。

 

 

■介護療養型医療施設
医療法の適用をうける医療施設であり、主に医療法人によって運営されている。慢性期の病状の比較的安定した長期療養患者を中心とした、医学的管理が必要な要介護者を受け入れている。介護保険が適用される「介護療養病床」は、長期的に介護医療が必要な患者。医療保険が適用される「医療療養病床」は、長期的に医療療養が必要な患者という位置づけであったが、国の調査で『「介護療養病床」と「医療療養病床」の利用者の状況に大きな違いがみられなかった』という報告がなされた。つまり、医療と介護が明確に区別されることなく、介護療養型医療施設が利用されている現状が明白になった。また、医療施設であるにも関わらず、介護保険が適用されていた問題も表面化した。

そのため、介護療養型医療施設は、2018(平成30)年3月末までで廃止となる予定であったが、2017(平成29)年5月に成立した改正介護保険法で新施設に転換するための準備期間として6年延長された。受け皿として新たな介護保険施設に、日常的な医学管理や看取り、介護を一体的に提供する「介護医療院」が創設される。

※具体的な設置基準や介護報酬などは今後議論される予定なので今の段階ではそういうものができるのかと頭の片隅にあればよい。

 

 

■介護保険施設
利用する施設サービスが保険給付の対象となる施設で、都道府県知事に指定を受けた介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)介護老人保健施設、介護療養型医療施設を指す。ただし、介護療養型医療施設は廃止され、介護医療院が加わる予定である。

 

■ユニットケア
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設などで、高齢者を10人程度のグループに分けて、それを生活の単位(ユニット)とし、同じメンバーで生活し、決まったスタッフがケアにあたるという形である。居室は個室とし、リビングのような小さな共用空間を共有することで、入居者が相互に社会的関係を築き、なじみの関係を形成できるようにする。居宅に近い居住環境と、居宅の生活に近い日常生活を確保し、そのなかでケアを行う。すなわち、生活単位介護単位を一致させたケアである。
ただし、「隣のユニットには関心がない、状況がわからない」という状態を作らないために、職員間の情報の共有・意見交換の機会を意識的に設ける必要がある。

 

 

■施設サービス
施設サービス自体は以下の2種類でシンプルである。

介護福祉施設サービス
入所定員が30人以上の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)において、施設サービス計画(ケアプラン)に基づいて行われる入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行う。


介護保険施設サービス
介護老人保健施設
において、施設サービス計画(ケアプラン)に基づいて行われる、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療並びに日々の生活上の世話を行う。

 

 

◆地域密着型サービス

 

地域密着型サービス2005(平成17)年の介護保険法の改正により、2006(平成18)年に整備されたものである。2011(平成23)年の同法改正により、2012(平成24)年に新たに定期巡回・随時対応型訪問介護看護複合型サービスが地域密着型サービスに追加された。さらに2014(平成26)年の同法改正により、2016(平成28年から地域密着型通所介護が追加された。

地域密着型サービス事業者の指定は市町村が行う。原則として指定を行った市町村の被保険者のみが利用できる。

以下で具体的なサービス内容をみていく。

 

定期巡回・随時対応型訪問介護看護
2012(平成24)年4月から創設された定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、重度者をはじめとした要介護者の在宅生活を支えるため、日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護を一体的にまたはそれぞれが密接に連携しながら、定期巡回訪問と随時の対応を行う。

介護・看護一体型介護・看護連携型の2類型がある。

介護・看護一体型:
一つの事業所で訪問介護と訪問看護のサービスを一体的に提供するもの。

介護・看護連携型:
訪問介護事業所と訪問看護事業所が連携をしてサービスを提供するもの

 

 

夜間対応型訪問介護
居宅要介護者について、夜間の定期的な巡回訪問を行う。また、利用者や家族からの通報により、訪問介護員等が派遣され対応してくれるサービス。

 

認知症対応型通所介護
居宅要介護者
であり、かつ認知症の症状があるものについて、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、および老人福祉センター等の施設または老人デイサービスセンターに通わせ、入浴、排泄、食事等の介護、生活等に関する相談および助言、健康状態の確認その他の必要な日常生活上の世話や機能訓練を行う。

 

地域密着型通所介護
2014(平成26)年の介護保険法改正により創設されたサービス。施行は2016(平成28)年)居宅要介護者について、老人デイサービスセンターなどに通わせ、当該施設において入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるものおよび機能訓練を行う。利用定員が18以下であるものに限る。また認知症対応型通所介護に該当するものを除く利用者が19人以上であれば居宅サービスの通所介護に該当する

 

小規模多機能型居宅介護
29
人以下の登録利用者である高齢者の生活を中心におき、利用者の活動に合わせ、通い、訪問、宿泊などを組み合わせ、柔軟に生活を支援する施設。

 

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
要支援2か要介護者であってかつ認知症であるものについて、共同生活を営むべき住居において、入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話や機能訓練を行う。
1ユニット5人以上9人以下(原則最大2ユニットであるが、必要と認められる場合は3ユニットにすることができる)の小規模施設である。居室は原則として個室で、居間・食堂・台所・浴室などが設けられている。利用者の生活リズムを大切にし、ともに暮らす空間を重要視し、安心できる生活環境を整えることに重点がおかれている。

 

地域密着型特定施設入居者生活介護
地域密着型特定施設に入居している要介護者について、提供するサービスの内容、担当者、要介護者の健康上、生活上の問題点、解決すべき課題や目標等の事項を定めた計画に基づき行われる入浴、排泄、食事等の介護、洗濯、掃除等の家事、生活に関する相談および助言その他の必要な日常生活上の世話、機能訓練や療養上の世話を行うサービス。

地域密着型特定施設とは、有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームで、入居者が要介護者とその配偶者等に限られる介護専用特定施設のうち、入居定員が29人以下のもの。

 

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

29人以下の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で入所する要介護者について、サービス内容、担当者、要介護者やその家族の生活に対する意向、支援の方針等の事項を定める計画(地域密着型施設サービス計画(ケアプラン))に基づいて、入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行うサービス。

地域密着型老人福祉施設入所者生活介護の部屋は、次の4つのタイプに分かれる。

・多床室:定員2人以上の相部屋
・従来型個室:居間がない居室だけの部屋
・ユニット型個室:居間など共有スペースを併設し、個室の床面積が8畳以上の部屋
・ユニット型個室的多床室:床面積が8畳未満など基準が緩和された部屋
画像引用 https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/chiiki-service/micchaku.html
新しく建てられた特別養護老人ホームはユニット型と呼ばれており、ユニット型は全室個室となっており、10人ほどのグループに分けられ介護「ユニットケア」を受ける。
ユニットケアとは、居室が全室が個室であり、1ユニット10人以下のプライバシーに最大限配慮した部屋作りのなかで、専従スタッフと一緒に「今までと変わらない生活を送れること」を目的とした入居者中心のケア体制のことである。なお、入浴やレクリエーションなどは団体で行うことになる。
昼間1ユニットごとに常勤1名の介護職員または、看護職員の配置が必要で、夜間2ユニットごとに常勤1名の介護職員または、看護職員の配置が必要である。

 

複合型サービス
居宅要介護者について、居宅サービスや地域密着型サービスを2種類以上組み合わせて提供するサービスであるが、現状では訪問看護と小規模多機能型居宅介護の組み合わせしかないため、2015(平成27)年4月から「看護小規模多機能型居宅介護」と呼ばれることになった。前述の小規模多機能型居宅介護に訪問看護の要素が加わり医療面の不安が軽減されている。

 

■地域密着型サービス事業所は、利用者やその家族、市町村職員、地域の代表者等に対しサービス内容等を明らかにすることにより、事業所による利用者の「抱え込み」を防止し、地域に開かれたサービスとすることで、サービスの質の確保を図ることを目的として、各事業所に運営推進会議の設置が義務づけられている。

 

 

◆居宅介護支援

 

居宅要介護者が居宅サービス、地域密着型サービス等を適切に利用することができるよう、居宅介護支援事業者介護支援専門員(ケマネジャー)が要介護者の依頼を受けて居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、居宅サービス事業者、地域密着サービス事業者などとの連絡調整を行うサービス。
居宅要介護者が地域密着型介護老人福祉施設または介護保険施設への入所を必要とする場合は、その紹介、その他の便宜の提供も行う。
居宅介護支援は介護の入り口となる重要なサービスで、全額が介護保険で賄われており、自己負担はゼロである。

居宅サービス計画
居宅サービス計画は、保健・福祉・医療などの公的サービスだけでなく、ボランティアや近隣の支援などインフォーマルなサービスとも調整し、在宅生活を支える総合的な計画として作成される。

・居宅サービス計画に訪問看護等の医療サービスを位置づける場合には、医師の指示が必要になる。

・居宅サービス計画の内容については、文書利用者の同意を得なければならず、作成された居宅サービス計画は利用者および居宅サービス等の担当者交付しなければならない

・居宅サービス計画を立てるにあたっては、要介護者およびその家族主体的に参画し、最終的には要介護者家族同意を得たものであることが必要である。居宅サービス計画の見直しは状況の変化に応じて適宜行われる。

 

※居宅介護支援事業者は、お客の要望に沿って、ホテル、交通機関などを調整、手配する旅行会社のようなイメージである。

 

居宅介護支援事業者地域包括支援センターの違い
居宅介護支援事業者要介護1以上の方を支援しているのに対して、地域包括支援センターは地域住民を包括的に支援していることである。地域の高齢者の総合相談だけではなく、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防支援なども行っている。

 

 

 

◆その他のサービス

 

居宅介護住宅改修費(住宅改修)
手すりの取り付け、段差の解消、その他の厚生労働大臣が定める種類の住宅改修費の支給を行う。

 

 

 

次に要支援1,2の人が受けることのできるサービスを見ていく。

おおまかに分けると、都道府県が指定・監督を行う『介護予防サービス』市町村が指定・監督を行う『地域密着型介護予防サービス』、『介護予防支援』3つがある。実質的なサービス内容は介護給付のサービスに準ずるものが多い。

 

介護給付と予防給付

予防給付の対象となる人は、要支援1および要支援2で介護給付の対象となる人は、要介護1~5の人である。予防給付と介護給付では利用できるサービスに違いがあり、介護給付のほうが支給限度額は高い。

 

 

◆介護予防サービス

 

 

介護予防訪問入浴介護
サービス内容は介護給付の訪問入浴介護に準ずる

介護予防訪問看護
サービス内容は介護給付の訪問看護に準ずる

介護予防訪問リハビリテーショ
サービス内容は介護給付の訪問リハビリテーションに準ずる

介護予防居宅療養管理指導
サービス内容は介護給付の居宅療養管理指導に準ずる

介護予防通所リハビリテーション
サービス内容は介護給付の通所リハビリテーションに準ずる

介護予防短期入所生活介護
サービス内容は介護給付の短期入所生活介護に準ずる

介護予防短期入所療養介護
サービス内容は介護給付の短期入所療養介護に準ずる

介護予防特定施設入居者生活介護
サービス内容は介護給付の特定施設入居者生活介護に準ずる

介護予防福祉用具貸与
サービス内容は介護給付の福祉用具貸与に準ずる

特定介護予防福祉用具販売
サービス内容は介護給付の特定福祉用具販売に準ずる

 

★都道府県が指定・監督を行うサービスで介護給付にあって、予防給付にないものは訪問介護通所介護施設サービスである。

 

 

◆地域密着型介護予防サービス

 

介護予防認知症対応型通所介護
サービス内容は介護給付の認知症対応型通所介護に準ずる

介護予防小規模多機能型居宅介護
サービス内容は介護給付の小規模多機能型居宅介護に準ずる

介護予防認知症対応型共同生活介護
サービス内容は介護給付の認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に準ずる。ただし、要支援1では利用できない要支援2以上でなければならない

 

★市町村が指定・監督を行うサービスで介護給付では利用できるが予防給付では利用できないものは定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、看護小規模多機能型居宅介護(複合サービス)である。

 

 

介護予防支援

実質的なサービス内容は介護給付の居宅介護支援に準ずるが、介護予防サービス計画(ケアプラン)の作成は原則として地域包括センター(所属している保健師、ケアマネ等介護予防支援に関する知識を有する者)が作成する。ただし、居宅介護支援事業者介護予防サービス計画(ケアプラン)の作成を委託することも可能である。

 

 

 

■総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)

最後に総合事業(赤線囲み)について詳しくみていく。
引用:厚生労働省

■地域支援事業
総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)を理解するために、まず地域支援事業について理解しておく必要がある。

2005(平成17)年の介護保険法の改正で、介護保険財源を活用した地域支援事業が行われることとなった。(施行は2006(平成18)年)

地域支援事業は、高齢者が要介護状態になることを防ぎ、要介護状態になっても住み慣れた地域において、できる限り自立した生活を営むことができるよう支援することを目的とした事業である。地域支援事業では、市町村が実施主体となり、地域の実情および高齢者のニーズ、生活実態に応じてサービスが提供される。具体的には次の3つの事業が行われていた。

①介護予防事業
要介護認定で非該当とされた高齢者に対し、介護予防に関する情報を提供したり、地域ボランティア活動などへの参加を支援たりするもの。

②包括的支援事業
地域包括支援センターにおける介護予防を目的としたケアマネジメントの実施、各種相談業務、権利擁護業務。

③任意事業
市町村が、地域の実業や住民ニーズに応じて独自に実施するもの。家族介護を支援するサービスなども含む。

 

 

2011(平成23)年の介護保険法の改正(施行は2012(平成24年)で、高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく有機的かつ一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築がなされることとなった。この改正で地域支援事業の一つとして総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が導入された。総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の導入により、それまで要支援1・2と認定された高齢者に対し、全国一律の内容、料金で提供されていた介護予防給付のうち、介護予防訪問介護介護予防通所介護、地域支援事業の形式へ移行されるなど、大きな再構築が行われた。下図のようなイメージである。

介護予防事業

包括的支援事業

任意事業

地域支援事業

↓↓ 2011年の介護保険法改正 ↓↓

総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)

包括的支援事業

任意事業

地域支援事業

総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の具体的な内容を以下でみていく。

 

■総合事業サービス
総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)とは2015(平成27)年4月に施行された新しいサービスである。この事業の趣旨は「市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域で支え合う体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すもの」としている。

介護給付や予防給付は国の介護保険制度によって基準や単価が全国一律であったが、新しい総合事業では各市町村が基準や単価を設定して運営する。各自治体が主体となることで自由度が高くなり、地域の実情に応じたサービスを創意工夫によって提供できるようになると期待されている。

また、既存の介護事業所だけではなく、NPO、ボランティア団体、民間企業、地域住民などによるサービス提供も可能になり、高齢者の生活を地域全体で支援する取り組みが進むことにより、地域活力の向上つながることも期待されている。

 

 

■総合事業のサービス事業対象者
総合事業は、介護予防・生活支援サービス事業一般介護予防事業の2事業で構成されている。
介護予防・生活支援サービスは要介護認定で要支援1・2の認定を受けた高齢者と「基本チェックリスト」(後述)による判定で、要介護・要支援となるリスクが高いと判定された高齢者を対象としている。
一方、介護予防体操教室や介護の専門家を招いた講演会などに相当する一般介護予防事業は、前者の要支援認定を受けた高齢者も含む、65歳以上の全ての高齢者(第一号保険者)に加え、その支援のための活動に関わる者を対象としている。

 

■基本チェックリスト
基本チェックリストとは、介護予防が必要な高齢者を早期に発見するために作成された質問紙である。総合事業のサービスを利用しようとする際、市町村の窓口または地域包括支援センターにおいて、基本チェックリストを用いながら相談を進めていく。

 

介護予防・生活支援サービス運営する自治体によって異なる

・訪問型サービス
自立生活あるいは社会参加の促進を目標とし、自宅の掃除や洗濯等の日常生活支援を行うサービス。

・通所型サービス
身体機能及び生活機能の改善を主眼とし、体操教室や栄養改善等のプログラムを提供するサービス

 

・その他の生活支援サービス
訪問型、通所型サービスの内容以外に地域の実用に応じて提供されるサービス。

例:住民ボランティアによる訪問見守りサービス等

 

 

一般介護予防事業運営する自治体によって異なる

一般介護予防事業は、次の5つの事業で構成されている。

・介護予防把握事業
地域の実情に応じて収集した情報等の活用により、閉じこもり等の何らかの支援を要する者を把握し、介護予防活動へつなげる。

・介護予防普及啓発事業
介護予防活動の普及・啓発を行う

・地域介護予防活動支援事業
地域における住民全体の介護予防活動の育成・支援を行う

・一般介護予防事業評価事業
介護保険事業計画に定める目標値の達成状況等の検証を行い、一般介護予防事業の事業評価を行う。

・地域リハビリテーション活動支援事業
地域における介護予防の取組を機能強化するために、通所、訪問、地域ケア会議、サービス担当者会議、住民運営の通いの場等へのリハビリテーション専門職等の関与を促進する。

 

★ここまでに出てきた介護サービスを一度表にまとめる

  都道府県が指定・監督を行うサービス 市町村が指定・監督を行うサービス その他
介護給付

居宅サービス
~訪問サービス~
・訪問介護
・訪問看護
・訪問入浴介護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導

~通所サービス~
通所介護
・通所リハビリテーション

~短期入所サービス~
・短期入所生活介護
・短期入所療養介護

~他~
・特定施設入居者生活介護
・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売

施設サービス
・介護福祉施設サービス
・介護保険施設サービス

地域密着型サービス

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・認知症対応型共同生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・看護小規模多機能型居宅介護(複合サービス)

 

 

居宅介護支援

住宅改修
予防給付

介護予防サービス
~訪問サービス~

・介護予防訪問看護
・介護予防訪問入浴介護
・介護予防訪問リハビリテーション
・介護予防居宅療養管理指導

~通所サービス~
・介護予防通所リハビリテーション

~短期入所サービス~
・介護予防短期入所生活介護
・介護予防短期入所療養介護

~他~
・介護予防特定施設入居者生活介護
・介護予防福祉用具貸与
・特定介護予防福祉用具販売

 

地域密着型介護予防サービス
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防認知症対応型共同生活介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護

介護予防支援

住宅改修
総合事業   運営する自治体によって異なる  

★覚え方のコツ
①都道府県が指定・監督を行う介護給付のサービスを覚える
②  ①から施設サービス訪問介護通所介護を抜いて、頭に介護予防をくっつけたサービスが都道府県が指定・監督を行う予防給付のサービスになる。
③市町村が指定・監督を行う介護給付のサービスを覚える
④③のうち”認知症”が名称に入っているもの+小規模多機能+介護予防支援が市町村が指定・監督を行う予防給付のサービスになる。

 

地域包括ケアシステム
環境の変化がストレスになる高齢者の中には、可能な限り住み慣れた地域や自宅で日常生活を送ることを望む人が多いと思われる。また、地域内で介護が必要な高齢者を効率良くサポートするためには、家族のメンバーや地域の医療機関、介護の人材が連携し合い、状況に応じて助け合う必要がある。
そこで、地域における「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の5つのサービスを一体的に提供できるケア体制を構築しようというのが、地域包括ケアシステムである。
 つまり、地域包括ケアシステムとは地域の実情や特性に合った体制を整えていくものである。全国一律ではなく、各地域で高齢化がピークに達するときを想定し、その地域が目指すケアシステムを計画していく。ここでいう「地域」とは日常生活圏域を指し、おおむね30分以内に駆けつけられる場所を想定している。具体的には中学校区を基本とする。高齢者の住居が自宅であるか施設であるかを問わず、健康に関わる安心・安全なサービスを24時間毎日利用できることが目的です。

~地域包括ケアシステムの構成要素~

厚生労働省は、2013年3月、2014年3月の地域包括ケア研究会報告書において、地域包括ケアシステムの構成要素と「自助・互助・共助・公助」について次のように説明している。
 
【住まいと住まい方】
生活の基盤として必要な住まいがきちんと整備され、本人の希望と経済力に沿った住まい方が確保されていることが地域包括ケアシステムの前提です。周囲のサポートは必要である、それと同時に高齢者のプライバシーや人間としての尊厳が十分に守られた住環境を実現する必要がある。
 
【生活支援】
心身の能力の低下、経済的理由、家族関係の変化などの要因があっても、尊厳ある生活を継続できるように生活支援を行う。
生活支援の中には、食事の準備など、サービス化できる支援から、近隣住民の声かけや見守りなどのインフォーマルな支援まで幅広く存在し、担い手も多様である。
 
【介護・医療・予防】
個々人の抱える課題に合わせて「介護・リハビリテーション」「医療・看護」「保健・予防」が専門職によって提供される(有機的に携し、一体的に提供)。ケアマネジメントに基づき、必要に応じて生活支援と一体的に提供。
 
【本人・家族の選択と心構え】
「住まいと住まい方」「生活支援」「介護」「医療」「予防」の5つの構成要素には含まれないものの、地域包括ケアシステムを支えていく重要な要素として触れておく必要がある部分である。単身・高齢者のみ世帯が主流になる中で、在宅生活を選択することの意味を、本人とその家族が理解し、心構えを持つことが重要である。

~自助・互助・共助・公助から見た地域包括ケアシステム~

【費用負担による区分】
公助」は税による公の負担、「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担であり、「自助」には「自分のことを自分でする」こと以外に、自費による市場サービスの購入も含まれる。
これに対して「互助」は、相互に支え合っているという意味で「共助」と共通点はあるものの、費用負担が制度的に裏付けられていない自発的なものであり、主に地域の住民やボランティアという形で支えられている。

 

 

■地域ケア会議
地域ケア会議は、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基
盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法である。具体的には、地域包括支援センター等が主催し、

・医療、介護等の多職種が協働して高齢者の個別課題の解決を図るとともに、介護支援専門員の自立支援に資するケアマネジメントの実践力を高める。

・個別ケースの課題分析等を積み重ねることにより、地域に共通した課題を明確化する。

・ 共有された地域課題の解決に必要な資源開発や地域づくり、さらには介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげる

 

◆介護保険制度以外の福祉サービス

 

介護保険サービスには、介護保険法に定められている厳格な利用基準があるため、サービスの種類や利用条件に制限がある。そこで、介護保険では提供できないサービスを提供するのが「介護保険外サービス」である。
介護認定を受けている高齢者も、受けていない高齢者も利用できるのが特徴である。
介護保険外サービスには、市区町村などが実施する非営利目的の支援サービスから民間企業が行うサービスまで幅広くあり、実施する主体によって利用方法や費用が異なっている。

 

生活支援ハウス(高齢者生活支援センター)
高齢者に対して、介護支援機能居住機能および交流機能を総合的に提供します。高齢者が安心して健康で明るい生活を送れるように支援し、高齢者の福祉の増進を図ることを目的としている。
居住部門の利用対象者は、原則として60歳以上のひとり暮らしの方、夫婦のみの世帯に属する方または家族による援助を受けることが困難な方であって、高齢などのため独立して生活することに不安のある方である。

 

 

■サービス付き高齢者向け住宅
⾼齢者が安全かつ快適に暮らせるよう、「⾼齢者住まい法」という法律のもとにバリアフリー構造の高齢者住宅として整備されている。
サービス付き高齢者向け住宅は、利用者の希望や、要介護度に合わせてサービス内容を決めることができるというのが最大の特徴である。

~有料老人ホームとの比較~

◎介護サービスの違い
有料老人ホームは種類により、介護を必要とする高齢者が入居できる場合がある。しかし、サービス付き高齢者向け住宅は、基本的に自立した生活が可能な高齢者が主な対象です。施設により違いがあるものの、簡単な安否確認生活相談、掃除・買い物代行といった生活支援のサービスが主である。重度の介護状態では、住み続けることが難しい。

◎生活の自由度
入居している高齢者の特性上、有料老人ホームは外出や外泊をする際は、その都度届け出が必要である。ほとんどの高齢者が事前に届け出ることで受理されるが、要介護度によっては申請が通りにくいケースもある。
一方のサービス付き高齢者向け住宅は、あくまでも賃貸住宅の一種なので、外出・外泊も届け出の必要がない。

◎契約形態
有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の最も大きな違いとしてあげられるのが契約形態である。有料老人ホームでは、施設に住む権利・利用する権利、さらに介護をはじめとしたサービスを受ける「利用権方式」の契約形態となる。
一方のサービス付き高齢者向け住宅は、あくまで賃貸住宅の一種なので、利用者と賃貸契約を結ぶことになる。

~サービス付き高齢者向け住宅として登録されるための基準~

◎各居室の床面積は原則として25㎡以上あること

※ただし、リビングルームや食堂、台所などそのほかの共有スペースが、共同して利用するうえで十分な面積がある場合は18㎡以上あれば良い

◎各居室に水洗便所、浴室、洗面設備、台所、収納設備を備えていること

※ただし、共有スペースに共同で利用できる台所浴室収納設備が設置されていて、各居室に備えつけた場合と同じまたはそれ以上の居住環境が確保されていれば、各居室への設置がなくても問題ない

また、館内がすべてバリアフリー構造となっていることも重要な基準のひとつです。

安否確認サービス生活相談サービスの提供を行っていること。これらのサービスを行うために、「ケアの専門家」が少なくとも日中の間は館内に常駐していること(夜間については、常駐は義務付けられていないが、何かあったときに速やかに駆けつけることができる状態にすることが義務化されている。)

ここで言うケアの専門家とは、社会福祉法人や医療法人、指定居宅サービス事業所などの職員、医師、看護師、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、さらに介護職員初任者研修過程の修了者などが該当する。

また、見守りサービス以外に、食事の提供や入浴時の介助などの生活支援サービスを提供しているサ高住もある。

 

 

 

7.介護における連携

 

◆多職種連携(チームアプローチ)

 

■介護の実践における多職種連携(チームアプローチ)の意義は、異なる専門性をもつ多職種がチームになって利用者を支え合うことにより、互いの専門職としての能力を活用して効果的なサービスを提供できるところにある。

 

■連携が必要な医療関係職種

看護師
保健師助産師看護士法において「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」をいう。看護師の資格は、業務独占の資格であり、名称独占の資格でもある。

※じょく婦:子供を産んだ後、平常時の身体に戻るまでの期間にある女性

 

保健師
保健師助産師看護士法において「厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」をいう。名称独占の国家資格である。保健師は看護師の業務「療養上の世話又は診療の補助」を行うことができると定められており、地域包括支援センターに配置されているほか、市町村や保健所などに勤務している。

 

助産師
保健師助産師看護士法において「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦もしくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」をいう。助産行為を行うことができるのは、医師および助産師で、助産師は業務独占の国家資格であり、名称独占の国家資格でもある。助産師は、看護師の業務「療養上の世話又は診療の補助」を行うことができる。

 

 

理学療法士
理学療法士及び作業療法士法に基づくリハビリテーションの専門職であり、主として、身体の基本的動作能力の回復を図るために、医師の指示のもとに理学療法(治療体操、電気刺激、マッサージ、温熱など)を行う。

 

作業療法士
理学療法士及び作業療法士法に基づくリハビリテーションの専門職であり、主として、障害のある人(身体障害者、知的障害者、発達障害者、高齢障害者、精神障害者などを含む)に対して、患者の日常生活を想定した、具体的な動作を用いての機能回復(基本的動作能力)、そして、より応用的・実践的な動作を用いて能力の開発や手段への獲得(応用的動作能力)、心身への機能回復ならびに生活の実現(社会適応能力)に努める職種である。もう少しイメージしやすいように仕事の一例を以下に書く。

自宅でお風呂に入るためには「服を脱ぐ」「浴室のドアを開け、中に入りドアを閉める」「体を洗う」「浴槽をまたいで座る」「浴槽や浴室から出る」「服を着る」という様々な動作が伴う。そこで作業療法士は、健康なときには特に気にしなかった一連の動作を一つ一つ紐解き、特に苦手な動作を中心にそれぞれの行程を想定した訓練を行う。

 

言語聴覚士
言語聴覚士法に基づき、言葉や聴こえに障害のある人や、嚥下などに障害のある人について、訓練・検査・助言・指導などを行う。

 

薬剤師
薬剤師法に基づき調剤や医薬品の供給、薬事衛生を行う。特に調剤業務は薬剤師だけが行うことができる独占的な業務である。(ただし、例外として、医師または歯科医師が法令で定める特別の場合において、自己の処方箋により自ら調剤すること等は認められている)。

 

栄養士
栄養士法に基づき栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者である。栄養士は、食物栄養の専門家で食生活を支える。生活環境やからだの状態に合わせたメニューを作り、栄養指導を行い、よりよい食生活を手助けする。

 

管理栄養士
栄養士の免許を取得後、国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けた者である。学校給食、病院、保健所、市町村の保健センター、福祉施設、外食産業、食品メーカーなどで栄養指導にあたったり、栄養士の指導を行う。

 

医師
業務独占の国家資格であり、医師法において「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定められている。医師だけが、診断、投薬・注射、手術、生理学的検査などを行うことができる。

★医業の「業」とは、不特定多数の者を対象として反復継続の意思をもって行うことである。したがって、意識不明者の気道確保や人工呼吸等の救急法等の緊急避難的行為や、偶然反復継続された行為および自己に対する行為は「業」からはずされることがある。2005(平成17)年に厚生労働省は、医行為の範囲の解釈を示し、医行為の範囲外(医師ではなくてもできる)の行為として以下の11項目を列挙した。

①水銀体温計や電子体温計により液化で体温を計測することおよび耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること

自動血圧測定器により血圧を測定すること

③新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パスルオキシメータを装着すること

④軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物でよごれたガーゼの交換を含む)

⑤一定の条件を満たしたうえで、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の天眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの座薬挿入または鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること

⑥爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ることや爪ヤスリでやすりがけすること

⑦重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒または巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること

⑧耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)

⑨ストーマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること(肌に接着したパウチの取り換えを除く)

※ストーマ用装具(ストーマパウチ):人工膀胱や人工肛門を造設した際、腹部につくられたストーマから排泄される尿もしくは弁を貯留するための装具のこと

⑩自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと

※自己導尿:自らの手で尿道から膀胱内に細い管(カテーテル)挿入し、尿を対外に排泄する方法

⑪市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(薬局に売っている)を用いて浣腸をすること

 

 

■連携が必要な社会福祉関係職

介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、精神保健福祉士、手話通訳士等

 

介護支援専門員(ケアマネジャー)

要介護者等からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況に応じて、適切な居宅サービスまたは施設サービス等を利用できるよう、市町村や居宅サービス事業者、介護保険施設等との連絡調整等を行う者で、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識および技術を有する者として介護支援専門員証の交付を受けたもの。

 

精神保健福祉士

精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、または精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練そのほかの援助を行う。精神保健福祉法に基づく名称独占の資格であり、有資格者のみが精神保健福祉士を名乗り業務を行うことができる。

 

社会福祉士

福祉分野のエキスパートである。病気や障害、生活状況など、さまざまな理由によって、日常生活を送ることが困難になった人の相談を受け、安定した生活ができるようにサポートする仕事である。社会福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法による名称独占の国家資格であり、「高齢者介護」「障害者支援」「生活保護」「児童福祉」など福祉分野すべてが対象である。社会福祉士は、さまざまな問題を抱える相談者の悩みを聞き、その人に適した公的支援や地域のサービスを結び付け、解決法を提案していく。

 

 

■サービス提供責任者

訪問介護において、利用者宅に出向き、契約し、ニーズをアセスメントし、居宅サービス計画(ケアプラン)に基づいて、訪問介護計画(介護計画を作成する。利用者本人だけでなく、家族や介護支援専門員、サービス提供機関との調整を行い、訪問介護員に指導・助言を行う。訪問介護事業所の柱となる役職である。訪問介護事業者は、事業の規模に応じて、一人以上のサービス提供責任者を配置する必要がある。

 

■チームアプローチにおいては、その他、家族、友人、民生委員、ボランティア、建築士などとの連携も重要である。

 

 

◆地域連携

 

■民生委員

民生委員法に基づいて厚生労働大臣から委嘱(特定の仕事をひとにまかせ、頼むこと)された非常勤の地方公務員である。ボランティアとして活動するため、給与はない。ただし、必要な交通費・研修参加費などの活動費(定額)は支給される。社会福祉の増進のために、地域住民の立場から生活や福祉全般に関する相談・援助活動を行う。また、全ての民生委員は児童福祉法によって児童委員も兼ねており、妊娠中の心配事や子育ての不安に関する様々な相談や支援も行っている。核家族化が進み、地域社会のつながりが薄くなっている今日、子育てや介護の悩みを抱える人や、障害のある方、高齢者などが孤立し、必要な支援を受けられないケースがある。そこで、民生委員・児童委員が地域住民の身近な相談相手となり、支援を必要とする住民と行政や専門機関をつなぐパイプ役を務めている。

民生委員は、町会、自治会の推薦などから民生委員・児童委員にふさわしい人を都道府県知事に推薦し、最終的に都道府県知事が厚生労働大臣に推薦し、厚生労働大臣委嘱し決まる。任期は3年である。個人の私生活に立ち入ることもあるため、活動上知り得た情報については守秘義務が課せられている。この守秘義務は退任後も引き続き課される。

 

■社会福祉協議会

社会福祉法において地域福祉を推進する団体として位置づけられた、公共性の高い非営利民間福祉団体である。社会福祉協議会は、全国社会福祉協議会、都道府県社会福祉協議会(例:埼玉県社会福祉協議会)、市町村社会福祉協議会(例:川口市社会福祉協議会)、地区社会福祉協議会と、行政単位で設置されている。社会福祉協議会では、訪問介護や通所介護などの事業運営を行ったり、ボランティアセンターを設置したり、高齢者の見守り支援ネットワークや地域組織化を推進したりしている。

 

  • ボランティアセンターとは
    ボランティア活動に参加できるよういろいろな事業を行っている。ボランティア活動をしたい人とボランティア活動を頼みたい人をつないだり、ボランティアの養成をしていくための各種講座などを実施したりしている。

 

■福祉事務所

地域住民の福祉を行う行政機関である。福祉事務所という名称は、法的に定めのある固有の名称ではなく便宜的につけられた名称で、地域によっては福祉事務センターなど別の名称を付けている場合もある。

都道府県および市(特別区を含む)は条例で福祉事務所の設置が義務付けられている町村は福祉事務所を設置できるとされている。都道府県が設置する福祉事務所は、生活保護法児童福祉法、および母子及び父子並びに寡婦福祉法に関する案件を扱い、市区町村の福祉事務所は、これらに加えて老人福祉法身体障害者福祉法知的障害者福祉法に関する案件も扱う役割を担うことが社会福祉法で定められている。いわゆる福祉六法と呼ばれている法の下、福祉事務所にはケースワーカー、医療ソーシャルワーカー、保健師などの専門職員が配置され、担当地域内の住民の相談に応じ、学校や病院、福祉施設などの関係機関、あるいは民生委員・児童委員などと連携をとって問題を解決に導く役割を果たしている。

 

 

■地域包括支援センター

2005(平成17)年の介護保険法の改正によって2006(平成18)年に新設された。地域の保健医療福祉をつなぐ包括的で継続的な支援を行う機関である。地域における介護相談の最初の窓口となるのが地域包括支援センターであり、高齢者が住み慣れた自宅や地域で生活できるように、必要な介護サービスや保健福祉サービス、その他、日常生活支援などの相談に応じている。地域包括支援センターは、原則市町村に一か所以上設置することになっているが、定数に決まりはなく、市町村によっては10か所以上配置しているところもある。
地域包括支援センターが担当する地域を日常生活圏という。人口2~3万人ごとの地域包括支援センターの担当地域を指し、多くの場合中学校ごとの学区がこれにあたる。
地域包括支援センターの責任主体は市町村であり、センター設置の可否や担当圏域設定などは、市町村が行う。センターには、原則として保健師社会福祉士主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)(これらに準ずるものを含む)が配置される。

 

・地域包括支援センター包括的支援事業として以下の事業を行っている。

①第一号介護予防支援事業
要介護・要支援状態となるおそれの高い高齢者について介護予防ケアプランの作成、必要な援助の実施

②総合相談支援業務
総合相談、地域包括支援ネットワーク(後述)の構築、地域の高齢者の状況の実態把握など

③権利擁護業務
成年後見制度の活用促進、高齢者虐待への対応、困難事例への対応、消費者被害の防止に関する諸制度の活用など

④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
包括的・継続的なケア体制の構築、介護支援専門員のネットワークの構築・活用、介護支援専門員への指導・相談・助言など

上記に加えて、2014(平成26)年の介護保険法の改正により下記のものが追加された。(施行は2015(平成27)年)これらの事業は、2018(平成30)年3月までに実施されることになっている。

⑤在宅医療・介護連携推進事業
地域の医療・介護の資源の把握、切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築推進、医療・介護関係者の研修など

⑥生活支援体制整備事業
コーディネーターの配置や協議体の設置など

⑦認知症総合支援事業
認知症初期集中支援チームの関与による認知症の早期診断、早期対応や地域支援推進員による相談対応など

 

■地域包括支援ネットワーク

高齢者や障害のある人などを支援するために、さまざまな社会的資源が有機的に連携することができる環境整備として構築されるものである。高齢者虐待防止ネットワーク見守りネットワークなどがある。

地域包括支援センターは、行政機関、医療機関、介護サービス事業者、地域の利用者やその家族、地域住民、民生委員、社会福祉協議会等の関係団体等によって構成される人的資源からなる地域包括支援ネットワークの構築(市町村内の他機関との連携)に努める必要がある。

 

■保健所

地域保健法によって位置づけられた、住民の健康衛生を支える行政機関である。対人保健サービス分野としては、生活習慣病の集団検診や予防接種、妊婦や乳児に対する検診や指導、エイズの検査や相談や啓発、肺結核などの感染症に関すること、精神保健福祉に関すること、難病にかんすることなどの業務を担っている。

 

■市町村保健センター

市町村レベルの地域における保健活動・保健サービスの拠点である。都道府県が設置している保健所が、より広域的・専門的な健康課題(地域保健に関わる統計の作成、伝染病の予防、水質調査など)を把握し助言する技術的拠点であるのに対して、市町村保健センターは、地域住民に健康相談保健指導健康調査など直接保健サービスを提供する。なお、市町村は、市町村保健センターを設置することができるが、義務ではない

 

■セルフヘルプグループ

自助グループ・当事者組織・本人の会などともいわれ、病気、障害、依存、マイノリティグループなど、同じ状況にある人々が課題を共有し、相互に援助し合うために組織し、運営する自立性と継続性を有するグループである。相互に援助者、相談者の役割を経験することで、専門職からの一方向の援助の実を受けた場合では得られない、自尊心や自分が他者の手助けができるという感覚を強化でき、仲間同士の共感が問題解決に寄与する。海外ドラマなどで円形になった椅子に患者が座り、そのうちの一人が全員に経験談を話す場面があるが、それである。

 

 

8.介護従事者の倫理

 

◆職業倫理

 

■専門職は、法令で定められた事項を遵守すること(コンプライアンス)はいうまでもないが、とるべき行動について自らを律し、より社会に貢献し、人間の幸福を追求していく行動規範をもつことが必要である。

 

■日本介護福祉士会倫理綱領
1995(平成7)年に介護福祉士の職業倫理を定めるものとして、宣言された。

【前文】

私たち介護福祉士は、介護福祉のニーズを有するすべての人々が、住み慣れた地域において安心して老いることができ、そして暮らし続けていくことのできる社会の実現を願っています。
そのため、私たち日本介護福祉士会は、一人一人の心豊かな暮らしを支える介護福祉の専門職として、ここに倫理綱領を定め、自らの専門的知識・技術及び倫理的自覚をもって最善の介護福祉サービスの提供に努めます。

1利用者本位・自立支援

介護福祉士はすべての人々の基本的人権を擁護し、一人一人の住民が心豊かな暮らしと老後が送れるよう利用者本位の立場から自己決定を最大限尊重し、自立に向けた介護福祉サービスを提供していきます。

 

2専門的サービスの提供
介護福祉士は、常に専門的知識・技術の研鑽に励むとともに、豊かな感性と的確な判断力を培い、深い洞察力をもって専門的サービスの提供に努めます。また、介護福祉士は、介護福祉サービスの質的向上に努め、自己の実施した介護福祉サービスについては、常に専門職としての責任を負います。

 

3プライバシーの保護
介護福祉士は、プライバシーを保護するため、職務上知り得た個人の情報を守ります。

 

4総合的サービスの提供と積極的な連携、協力
介護福祉士は、利用者に最適なサービスを総合的に提供していくため、福祉、医療、保健その他関連する業務に従事する者と積極的な連携を図り、協力して行動します。

 

5利用者ニーズの代弁
介護福祉士は、暮らしを支える視点から利用者の真のニーズを受け止め、それを代弁していくことも重要な役割であると確認したうえで、考え、行動します。

 

6地域福祉の推進
介護福祉士は、地域において生じる介護問題を解決していくために、専門職として常に積極的な態度で住民と接し、介護問題に対する深い理解が得られるように努めるとともに、その介護力の強化に協力していきます。

 

7後継者の育成
介護福祉士は、すべての人々が将来にわたり安心して質の高い介護を受ける権利を享受できるよう、介護福祉士に関する教育水準の向上と後継者の育成に力を注ぎます。

 

 

◆利用者の人権と介護

 

■身体拘束
身体拘束は、行動制限やけがによる身体的弊害や精神的弊害など、大きな事故につながる危険性が高いと考えられている。行動制限をする前に、なぜ転倒しそうになるのか等、心身の状況から分析し、事故に結びつく要因を探り対応していくことが求められる。


■身体拘束がもたらす多くの弊害
2001(平成13)年の厚生労働省身体拘束ゼロへの手引きによると、身体拘束は以下のような多くの弊害を招くとされている。

  • 身体的弊害

①本人の関節の拘縮、筋力の低下といった身体機能の低下や圧迫部位の褥瘡の発生などの外的弊害をもたらす。

②食欲の低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下などの内的弊害をもたらす。

③車いすに拘束しているケースでは無理な立ち上がりによる転倒事故、ベッド柵のケースでは乗り越えによる転落事故、さらには拘束具による窒息等の大事故を発声させる危険性すらある。

  • 精神的弊害

①本人に不安や怒り、屈辱、あきらめといった多大な精神的苦痛を与えるばかりか人間としての尊厳をも侵す。

②身体拘束によって、さらに認知症が進行し、せん妄の頻発をもたらすおそれがある。

③家族にも大きな精神的苦痛を与える。自らの親や配偶者が拘束されている姿を見たとき、混乱し、公開し、そして罪悪感にさいなまれる家族は多い。

④看護・介護するスタッフも、自らが行うケアに対して誇りを持てなくなり、安易な拘束が士気の低下を招く。

  • 社会的弊害

①看護・介護スタッフ自身の士気の低下を招く。

②介護保険施設等に対する社会的不信、偏見を引き起こす。

③高齢者のQOLを低下させ、さらなる医療的処置を生じさせ、経済的にも少なからぬ影響をもたらす。

 

■身体拘束の要件

身体拘束は、緊急やむを得ない場合の要件として、①切迫性、②非代替性、③一時性の3つの要件を全て満たした場合をあげている。

 

 

高齢者虐待

高齢者虐待防止法において、高齢者虐待は、身体的虐待心理的虐待性的虐待経済的虐待ネグレクト(介護・養護の放棄)に区分される。高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合、発見者は市町村への通報義務がある。通報義務は、他の法律などで定められている守秘義務より優先される
2017(平成29)年の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」によると、

・被虐待高齢者から見た虐待者の続柄は、「息子」が 7,530 人(40.3%)で最も多く、次いで「夫」が 3,943 人(21.1%)、「娘」が 3,251 人(17.4%)であった

・虐待を受ける高齢者の性別女性、年齢は80歳代が多い。

・相談・通報者 2,201 人のうち、「当該施設職員」が 510 人(23.2%)で最も多く、次いで「家族・親族」が 460 人(20.9%)であった。

・被虐待高齢者における虐待者との同居・別居の状況については、「虐待者のみと同居」が 8,863 人(50.5%)で最も多く、「虐待者及び他家族と同居」の 6,413 人(36.6%)と合わせると 15,276 人(87.1%)の被虐待高齢者が虐待者と同居していた。

・被虐待高齢者の家族形態は、「未婚の子と同居」が 6,257 人(35.7%)で最も多く、次いで「夫婦のみ世帯」が 3,855 人(22.0%)、「子夫婦と同居」が 2,307 人(13.2%)であった。

・虐待の事実が認められた施設・事業所の種別は「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」が 155 件(30.4%)で最も多く、次いで「有料老人ホーム」が 110 件(21.6%)、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」が 73件(14.3%)、「介護老人保健施設」が 53 件(10.4%)であった。

・養介護施設従事者等による虐待において特定された被虐待高齢者 854 人のうち、
待の種別では「身体的虐待」が 511 人(59.8%)で最も多く、次いで「心理的虐待」261 人(30.6%)、「介護等放棄」144 人(16.9%)であった。

・入所系施設における被虐待高齢者の「認知症の程度」と「虐待の種別」の関係をみると、被虐待高齢者の認知症日常生活自立度Ⅳ/Mの場合、身体的虐待を受ける割合が特に高い

虐待発生の要因はさまざまだが、虐待防止のために、介護負担の軽減や障害に対する知識、介護技術の指導など介護福祉士の果たす社会的役割は大きい。

 

■障害者虐待

2011(平成23)年に障害者虐待防止法が成立した。(2012(平成24)年施行)この法律において障害者虐待とは、養護者による障害者虐待、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待および使用者(雇用主)による障害者虐待をいう。
障害者虐待は、身体的虐待性的虐待心理的虐待ネグレクト(減食、放置、介護・世話の放棄)経済的虐待に区分される。障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、これを市町村に通報しなければならない通報義務がある。通報義務は、他の法律などで定められている守秘義務より優先される

 

■児童虐待

児童虐待の防止等に関する法律において、児童虐待は、身体的虐待性的虐待ネグレクト(育児放棄、監護放棄)心理的虐待に区分される。児童虐待については、発見した者は市町村児童相談所等への通告義務がある。通告義務は、他の法律などで定められている守秘義務より優先される

 

 

◆プライバシーの保護

 

■2003(平成15)年に個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が成立した。医療・介護・福祉関係事業者に対する具体的な個人情報保護のために、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」などが策定されている。
個人情報保護への対応として、①利用者の個人情報を適切かつ安全に管理し、外部からの不正アクセスや不正使用、紛失、破壊、改ざんおよび漏洩等を予防する対策を講じる、②個人情報を第三者へ提供する場合、利用者からの同意があった場合を除き、個人の識別や特定ができない形式に変える、といった取り組みが必要になる。

 

■個人情報の取り扱いの例外規定
個人情報取扱業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで利用目的以外のことで、個人情報を取り扱ってはならない。ただし、次の①②いずれかに該当する場合は例外となる。

①法令に基づく場合

②人の生命身体または財産保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難である場合。利用者が急病となった際に、医師や看護師に対し、福祉関係事業者が状況を説明する場合などが該当する。

 

■個人データ開示の例外規定

個人情報取扱事業者は、本人から保有する個人データの開示を求められたときは、本人に対し遅滞なく、その保有個人データを開示しなければならない。ただし、開示することにより以下の①~③のいずれかに該当する場合は、その全部または一部を開示しないことができる。

①本人または第三者の生命身体財産その他の権利利益を害するおそれがある場合。

②当該個人情報取扱業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合。

③他の法令に違反することとなる場合。

 

 

9.介護における安全の確保とリスクマネジメント

 

 

◆介護における安全の確保

 

リスクマネジメントは、一般に危機管理と訳される。事故発生を未然に防止することや、発生した事故を速やかに処理することにより、組織の損害を最小限に食い止めることを目的としている。リスクマネジメントは、人間はエラーを起こすということを前提に、起こしたエラーが事故につながらないようにするための問題解決プロセスである。

■介護保険制度では、事故に関する規定に事故発生の防止のための指針の整備や、事故発生の防止のための委員会(事故防止検討委員会)の設置および従業者に対する研修を定期的に行うこと等が定められている。事故発生時には事故の状況や事故に際して採った処置についての記録義務付けられている。さらに、賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならないとされている。

 

■ハインリッヒの法則

1930年代にアメリカのハインリッヒが発表したハインリッヒの法則(1:29:300の法則)は、労働災害の調査から見出された事故の重大性と発生頻度の関係を示したものである。1件の重大事故の背景には29件の軽傷を伴う事故と、300件のヒヤリ・ハットする体験があるという法則である。さらに、ヒヤリ・ハットの背景には数千の安全とは言えない行動や状態が存在するとされる。介護施設の事故およびヒヤリ・ハット事例発生に伴い、事例の分析を行う場合には、事故の直接の原因だけではなく、その背景要因も含めた事故発生の問題点の究明が重要である。明らかになった問題点については、現場に速やかにフィードバックする。

 

■服薬や点眼

服薬の介護にあたっては、医師の指示した服薬時間(食前・食後等)、量、回数を守り、確実に飲み込んだかどうかに留意する。欠食による服薬の中止、服薬を忘れ一度に2倍の量を服用することなどは避ける。
目薬を点眼するときは、介護福祉職の手を洗い、ふき綿を下眼瞼に当て上を向かせ、下眼瞼を下に引き、容器の先がまつ毛に触れないよう、結膜の上に1~2滴を滴下し、瞼を閉じふき綿で拭く。

 

■JISマーク
JISマーク表示制度は、国に登録された機関による製品の品質を保証する第三者認証制度である。経済産業省は、2008(平成20)年に高齢社会への対応、国民生活の安全、安心の確保等の観点から、3つの福祉用具(手動車いす、電動車いす、在宅用電動介護用ベッド)に関して、工業標準化法(JIS法)に基づくJISマークの表示をスタートさせた。

 

 

◆事故防止、安全対策

 

 ■2014(平成26)年の「人口動態統計」による、65歳以上の家庭における不慮の事故による死亡順位は、溺死、窒息、転倒・転落、火災、中毒の順になっている。

個々の利用者について、できる限りリスクを軽減できるような介護の方法や、安心できるかかわり方を検討する場として、ケアカンファレンスサービス担当者会議がある。

 

■事故報告

介護の場面で発生した事故については、介護福祉士などの発見者からリーダーに報告し、最終的に施設や事業所の管理者に報告するしくみを整備することが義務付けられている
介護保険施設や事業所内では、チーム全体に事故情報が口頭事故報告書で伝達していく仕組みが重要である。事故発生の経緯とその後の対応などを組織的に共有することも必要となる。
2000(平成12)年から、介護保険法や老人福祉法の規定に基づく運営基準において、介護事故について市町村家族等への報告が義務付けられた。また、行政機関に対して書面での報告も求められる。

 

■非常災害対策計画
介護保険施設や事業所においては、「非常災害対策計画」を作成して、非常災害時の関係機関への通報連携体制を整備して年2回以上の消火・避難訓練が義務づけられている。。具体的には、消防計画、風水害、地震等の災害に対処する計画をいい、消防計画および消防業務の実施については、防火管理者を置くこととされている。

市町村長は、当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(以下「避難行動要支援者」という。)の把握に努めるとともに、地域防災計画の定めるところにより、避難行動要支援者について避難の支援、安否の確認その他の避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために必要な措置(以下「避難支援等」という。)を実施するための基礎とする名簿(以下この条及び次条第一項において「避難行動要支援者名簿」という。)を作成しておかなければならない

~非常災害対策計画の策定及び避難訓練について~

◎介護保険施設等が定めることとされている「非常災害対策計画」は、火災のみではなく、水害・土砂災害、地震等地域の実情にも鑑みた災害にも対処できるものとすること。

◎非常災害対策計画は、実際に災害が起こった際に利用者の安全が確保できる実効性のあるものとすることが重要であり、各施設等の状況や地域の実情を踏まえた内容とすること。

◎非常災害対策計画の内容を職員間で十分共有するとともに、関係機関と避難場所や災害時の連絡体制等必要な事項について認識を共有すること。

~非常災害対策計画に盛り込む具体的な項目例~

  • 介護保険施設等の立地条件(地形 等)
  • 災害に関する情報の入手方法(「避難準備情報」等の情報の入手方法の確認等)
  • 災害時の連絡先及び通信手段の確認(自治体、家族、職員 等)
  • 避難を開始する時期、判断基準(「避難準備情報発令」時 等)
  • 避難場所(市町村が指定する避難場所、施設内の安全なスペース 等)
  • 避難経路 (避難場所までのルート(複数)、所要時間 等)
  • 避難方法(利用者ごとの避難方法(車いす、徒歩等) 等)
  • 災害時の人員体制、指揮系統(災害時の参集方法、役割分担、避難に必要な職員数 等)
  • 関係機関との連携体制   等

 

 

■インシデントとアクシデント

インシデント(ヒヤリ・ハット)は、適切な処理が行われなければ事故となる。インシデントについての情報を把握・分析するための報告書をインシデントレポートという。

インシデントに気づかなかったり、適切な処置が行われなければアクシデントが発生する。アクシデントについての情報を把握・分析するための報告書をアクシデントレポートという。

 

 

◆感染対策

 

■感染対策の3原則

感染源の排除
感染経路の遮断
宿主(ヒト)の抵抗力の向上

 

■主な感染経路と原因微生物

接触感染(経口感染含む)
手指・食品・器具を介して伝番する頻度の高い伝播経路。

主な原因微生物は
・ノロウイルス(主として経口感染)
・腸管出血性大腸菌
・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
・緑膿菌 など

飛沫感染
咳、くしゃみ、会話などで、飛沫粒子(5㎛以上)により伝播する。1m以内に床に落下し、空中を浮遊し続けることはない

主な原因微生物は
・インフルエンザウイルス
・ムンプスウイルス
・風疹ウイルス
・レジオネラ属菌など

空気感染
咳、くしゃみなどで、飛沫核(5㎛以下)として伝播する。空中に浮遊し、空気の流れにより飛散する

主な原因微生物は
・結核菌
・麻疹ウイルス(はしか)
・水痘ウイルスなど(水ぼうそう)

血液媒介感染
病原体に汚染された血液や体液、分泌物が、針刺し事故等により体内に入ることにより感染する。

主な原因微生物は
・B型肝炎ウイルス
・C型肝炎ウイルス
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)など

 

■手洗いの基本
感染予防の基本は、「手洗いに始まって手洗いに終わる」といわれるほど、手洗いが重要視される。1ケア1手洗いを徹底する。

・爪は短く切る
・まず手を流水で軽く洗う
・石鹸を使用するときは、固形石鹸ではなく必ず液体石鹸を使用する。
・手洗いが雑になりやすい部位は、注意して洗う。
・石鹸成分をよく洗い流す。
・使い捨てのペーパータオルを使用する。(布タオルの共用はNG)
・水道栓は、自動水栓か手首、肘などで簡単に操作できるものが望ましい。やむを得ず、水道栓を手で操作する場合は、水道栓は洗った手で止めるのではなく、手を拭いたペーパータオルを用いて止める。

 

■感染リスクの軽減

入所者や職員の感染リスクを減少させるために、すべての人の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物などに触れる時には、手袋マスを着用する。触れる可能性がある場合にも、確実に着用する必要がある。必要に応じてゴーグルエプロンガウン等を着用する。手袋を外した時は、必ず液体せっけん流水で手洗いを行う。

 日常的な清掃においては、各所、原則1日1回以上の湿式清掃し、換気を行い乾燥させ、必要に応じ床の消毒を行う。使用した雑巾やモップは、こまめに洗浄し、乾燥させる。床に血液、分泌物、嘔吐物、排泄物などが付着した場合は、手袋を着用し、次亜塩素酸ナトリウム液等で清拭後、湿式清掃し、乾燥させる。トイレのドアノブや取手などは、消毒用エタノールで清拭し、消毒を行う。次亜塩素酸ナトリウムキッチンハイター等に含まれており、現場ではキッチンハイターを適宜濃度調整して使用することが多い。便や嘔吐物が付着した床等は0.1%程度の次亜塩素酸ナトリウム溶液を使い、ドアノブや手すりの消毒は0.02%程度でよい。

 

結核
結核は、結核菌の飛沫感染、空気感染により発症する。主な症状は咳・痰・微熱・血痰・喀血であり、新結核患者では高齢者が多い。

 

■疥癬

疥癬は、ヒゼンダニの寄生により、手指、胸腹部、大腿などに赤いブツブツ(丘疹、結節)がみられ、
夜間の激しいかゆみが特徴的である。接触感染のため、長時間の皮膚接触、衣類や寝具の共用などは避けるようにする。疥癬には通常疥癬角化型疥癬(疥癬の重症型)の二つのタイプがある。

通常疥癬は、治療を開始すると感染性はほとんどなくなる。角化型疥癬は、ヒゼンダニの寄生数が多く感染力が非常に強いため、個室管理とし、掃除機を毎日かける、シーツ・衣類を毎日交換する、ケアを行うときは予防衣とゴム手袋を着用する、入浴は最後にするなど、感染拡大防止対策を徹底する。

疥癬の治療では、殺ダニ剤の内服薬と軟膏が用いられる。軟膏は、皮疹のないところも塗り残しがないようにする。ヒゼンダニは、熱・乾燥に弱く50℃では10分程度で死滅するので、角化型疥癬の場合には、洗濯物をビニール袋に入れ殺虫剤を散布するか、50℃以上の湯に10分以上漬け、その後に洗濯する。(通常疥癬は通常の洗濯でよい)。スタンダード・プリコーション(感染症や疾患の有無に関係なく排泄物や血液、汗をのぞく体液等を潜在的な感染源とみなして対応する予防策。標準予防策と呼ぶ。)として、1ケア1手洗いを実施し、感染の可能性のあるものを直接手で触らないなどを徹底する。

 

■日和見感染症
日和見感染症とは、免疫力が低下しているために、通常なら感染症を起こさないような感染力の弱い病原菌が原因で起こる感染症をいう。日和見感染症の代表的なものに、院内感染(施設内感染)が問題となっているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症、ヘルペスウイルス感染症、カンジダ症、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス肺炎などがある。

 

■耐性菌
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)緑膿菌に代表される各種の薬剤耐性菌は、主に院内感染の原因菌といわれている。これらの耐性菌は、抵抗力が保たれている人に関しては病原性を示さないため、保菌しているだけでは健康障害に至ることはないが、耐性菌は健康な人も保持していることがある。耐性菌は主に接触感染であり、感染防止には手洗いが基本となる。

 

■腸管出血性大腸菌感染症
腸管出血性大腸菌感染症は、O157等ベロ毒素を生産するグループの感染によるもので死亡することがある。これ以外の食中毒の原因菌として、ブドウ球菌、サルモネラ属菌・腸炎ビブリオ・ボツリヌス菌がある。

 

■帯状疱疹
帯状疱疹は、水痘ウイルス・帯状疱疹ウイルスが原因で、ウイルスが身体に潜んで抵抗力が低下することで発症する。特徴としては、神経走行に沿って疱疹が出ることと、そのための激しい痛みがある。早期に抗ウイルス剤を服用し、神経ブロック注射などで痛みを軽減する治療を行わなければ、長期間、神経痛が残る可能性がある

 

■ノロウイルス
ノロウイルスは、感染性胃腸炎を起こす。冬季に流行する感染性胃腸炎の大半にノロウイルスが関与している。集団生活を送っている施設で爆発的な流行をみることがある。主な症状は嘔気嘔吐下痢である。
ノロウイルスの感染経路は、基本的に食品をバ回とする経口感染であるが、感染した人の糞便や嘔吐物などに触れ、手指などを介してウイルスが口に入る接触感染や、汚染された下痢弁や嘔吐物が飛び散り、その飛沫が口に入って感染する飛沫感染がある。
ノロウイルスの効果的な予防方法は、液体せっけん流水による手洗いである。帰宅時、調理の前後、食事前には必ず手を洗う。ノロウイルス感染症の嘔吐物・下痢便の処理には、マスク・手袋・ガウンを着用し、メガネやゴーグルで目を防御する。ノロウイルスは塩素系の消毒剤家庭用漂白剤(キッチンハイター等)でなければ、効果的な消毒はできない。

 

 

10.介護従事者の安全

 

◆身体の健康管理

 

■ボディメカニクス
人間の運動機能である骨・関節・筋肉等の相互関係の総称。あるいは力学的相互関係を活用した技術のこと。
家庭で介護を担う者や、福祉施設などで働く介護職員は、介護を必要とする人を抱えたり、持ち上げたり、支えたりしなければならない。そのため介護者の身体への負担は大きく、介護従事者の8割が腰痛や肩こりを経験しているという調査結果もある。このような介護負担を軽減させるには、余分な力を使わず無理のない姿勢で介護する方法が有効である。介護だけでなく、看護・育児でも活用することで、身体の負担を軽減することができる。

 

~ボディメカニクスの原則~

支持基底面積(身体の床面に接している部分を直線で結んだ面積)を広くとる。

重心の位置を低くする。
③重心の移動をスムーズにする。
対象を持ち上げるのではなく、水平に滑らせるように移動することで負担が軽減する。また、垂直に向かい合ったり、移動する方向に足先を向けるとよい。

重心を近づける
介護者と利用者双方の重心が近いほど介助が容易になる。

⑤てこの原理を使う。
肘や膝を支点にして、てこの原理を使う。

身体を小さくまとめる
利用者の両手、両足を組む事等で摩擦が少なくなり、移動しやすくなる。

大きな筋群(背筋、腹筋、大腿筋など)を使う。
腕や足、指先だけの力で動作するより、大きな筋群を使用した方が力が大きく効率的である。

⑧前方に「押す」よりも、手前に「引く」ようにする。

 

 

■「職場における腰痛予防対策指針」
1994(平成6)年に厚生省(現・厚生労働省)は、「職場における腰痛予防対策指針を公表した。その後も業務上疾病全体に占める腰痛の割合が6割と高い水準で推移し、特に福祉・医療等における介護・看護作業の場では、労働災害としての腰痛が多発していることから、19年ぶりに腰痛予防のガイドラインを見直し、2018(平成25)年に「腰痛予防対策指針」が改訂された。

介護作業の適用範囲
腰痛予防対策指針(旧指針):重症心身障害児施設等における介護作業

腰痛予防対策指針(改定指針):福祉・医療分野等における介護・看護作業

 

  • 「腰痛予防対策指針」(改訂指針)においては、介護・看護作業による腰痛を予防するために、福祉用具を積極的に使用していくことによって、作業姿勢や動作についての見直しを行うべきとしている。特に、抱き上げに関しては、「労働者の腰部に著しく負担がかかることから、リフトなどを積極的に使用し、原則として人力による抱き上げは行わせないこと」と明記している。「福祉用具の使用が困難で、人力で抱き上げざるを得ない場合には、できるだけ適切な姿勢にて身長差が少ない2人以上で作業すること」としている。各作業においての腰痛発生のリスクアセスメントを行い、予防対策の推進を図るために労働安全衛生マネジメントシステムを導入するように求めている。
    また、重量物の取り扱い作業について機械を使わず人力によってのみ作業をする場合の重量は、男性(満18歳以上)は体重のおおむね40%以下、女性(満18歳以上)は男性が取り扱う重量の60%程度までとされている。また、女性労働基準規則では、満18歳以上の女性で、断続作業30㎏、継続作業20㎏以上の重量物を取り扱うことが禁止されている。
    その他には、健康管理として、①健康診断医師による腰痛の健康診断を実施し、その後は6か月以内に一回つまり年2回実施する)、②腰痛予防体操(ストレッチを中心とした腰痛予防体操の実施)、③腰痛による休職者が職場に復帰する際の注意事項(産業医などの意見を聴き、必要な措置をとる)を定めている。

 

 

■労働基準法
労働条件の最低基準を示す法律であり、他人を1人でも使用する事業に適用される。1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間を超えて労働させてはならない。また、女性の産前6週間(請求があった場合)以内、産後8週間以内の就業禁止等を定めている。

 

■労働安全衛生法
労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化および自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより、職場における労働者の安全健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としている。労働安全衛生法では、事業者と労働者の責務が以下のように定められている。

  • 事業者
    単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
  • 労働者
    労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。

 

■安全衛生管理体制
労働安全衛生法では、安全衛生管理体制づくりを義務付けている。介護事業における安全衛生管理体制は下の表のとおりである。

選任が定められているもの

労働者の数

総括安全衛生管理者

1000人以上

産業医

50人以上(1000人以上で専属配置)

衛生管理者

50人以上

衛生推進者

10人以上50人未満

衛生委員会

50人以上

 

 

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)

育児や家族の介護を行う労働者を支援する目的で、育児休業・介護休業、ならびに子の看護休暇介護休暇について定めている。その他に、対象労働者の時間外労働の制限、深夜業の制限、支援措置などを定めている。

介護休業
負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護や日常生活上の世話をするためのもので、対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに3回、通算93日まで申請により取得できる。
介護休業の対象となる家族には、配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者も含む)、父母、子、配偶者の父母のほか、労働者が同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫が含まれている。よって、別居の祖父母は対象外となる。 

介護休暇
介護のための短期の休暇制度として、1年度において最大5日間、介護対象者が二人以上の場合は10日間取得することができ、有給休暇とは別に与えられる休暇であると定められている。休暇の取得は1日単位もしくは半日単位で取得することができる。対象家族の通院等の付き添いや介護サービスを受けるために必要な手続きの代行などに利用できる。

 

 

■雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)

第9条で婚姻妊娠出産等を理由とする不利益取り扱いを禁止している。