1.人間関係の形成

◆人間関係と心理

 

自己覚知
事故の思想や価値観、感情などについて、客観的に理解することをいう。援助者が自身の価値観や感情などに左右されると、誤った支援をしてしまうこともあるため、自己覚知が必要となる。

 

共感
相手の感情をその人の立場になって理解し、その感情に寄り添うことである。「気持ちをわかってもらえた」と相手に思われるような共感的態度が大切である。

 

受容
相手をあるがままに受け容れることであり、先入観、印象に基づく判断や感情的なこだわりをもたないように努めなければならない。また、援助者が一方的に支持したり、アドバイスしたりすると、相手と対等な立場で受容しあうことが難しくなる。

 

ラポール
互いに信頼し合い、心理的距離が縮まり、感情の交流を行うことができる状態をいう。ラポールを形成するために共感受容の態度で接することが大切である。

 

 

2.コミュニケーションの基礎

 

言語的伝達媒体非言語的伝達媒体

言語的伝達媒体言語であり、会話のように話して伝える手段、手紙のように書いて伝える手段などがある。手話も言語のひとつである。非言語的伝達媒体は、ジェスチャーやため息、相手に対する動作、表情、視線、声のトーン、しぐさ、姿勢など発信者が無意識のうちに発信することが多い伝達媒体である。

 

◆コミュニケーションを促す環境

 

 

ユニバーサルデザイン
障害のある人もない人もすべての人に公平で使いやすいデザイン。パソコンや携帯電話などの普及は視覚障害のある人や、移動に不自由がある身体障害のある人のコミュニケーションの手段として大きな役割を果たしている。

 

グループホームユニットケア(介護の基本参照)では、小単位のグループケアの特徴を活かして少人数ゆえのなじみの関係でコミュニケーションを行うことができるように工夫されており、地域を生活の場にすることや住民などと接点をもつことを可能とするコミュニケーション環境が実現されている。

 

共体験
コミュニケーションの基本は、一緒に調理したりするなどの共体験である。何を作るか、どんな味にするか等のコミュニケーションの必然性が生じ、共体験終了後もそのことを話題にコミュニケーションがはずむ。

 

 

◆コミュニケーションの技法

 

 

家族への助言の基本
苦労をねぎらい、大変であるという家族の思いに共感・受容し、否定しないことである。「今までのやり方でもよいのだけれど、こっちのほうがもう少し楽かもしれません」などの言葉を添えながら方法を示すとうまくいくことが多い。

 

■信頼が築けていない段階や、利用者が真意を意図的または無意識に隠している場合には、利用者の表情動作の観察、さりげない会話を通して関係の構築を図ることが大切である。

 

対人距離

物理的距離(測定可能な実際の距離)と心理的距離(こころの距離、親密度)がある。

2者間の物理的距離が約45cm以内の場合を親密距離と呼び、約45~120cmを個人的距離と呼ぶ。介護福祉職と利用者との間の距離は個人的距離が適切である。近づきすぎると緊張や不快感を与える可能性があるため、近づく必要のあるときは事前に声をかける等の配慮が大切である。

 

■利用者と接するときは、介護福祉職もしゃがんだり腰をかがめたりして、利用者の目線と同じ高さになるように心がける。立ったまま車いすやベッド上の利用者に接すると、利用者を見下ろす目線となり威圧感や緊張感を与えやすい。

 

利用者との関係を作る座り方

利用者と向かい合って座る対面法ではなく、斜め45度で座る直角法のほうが有効である。対面法では目のやり場に困りやすく緊張感が増す。直角法で座ると自然なアイコンタクトが可能になり、ゆとりをもって会話することができる。対面法で座る場合には、視線を向けることのできる花瓶などを机の上に置くとよい。

 

非指示的雰囲気づくり

非指示的雰囲気づくりとは、話を誘導するのではなく、徹底した傾聴的な態度で話しを聴くことである。利用者の言葉に合わせて、うなずく、穏やかなまなざしを向けて傾聴的な態度を伝える。

 

カウンセリング技法の「反射
利用者の言葉を繰り返すことである。利用者は、あたかも鏡に向き合うように自分の気持ちに向き合うことができる。

 

感情の反射

言葉のなかに含まれている相手の気持ちを受け止め、その気持ちを相手に言葉で伝え返すこと。感情の反射に期待される効果は以下のようなものがある。

・相手が自分の気持ちをわかってくれていると思ってくれる
・相手の口から自分の気持ちを聞くことで気づきにつながることがある。
・自分の気持ちを伝え返されることで、気持ちの吟味ができることがある。

カウンセリング技法の「感情の明確化

利用者から出てくる言葉に含まれる感情をさらに踏み込んで明確化することで、気づかなかった感情に触れる支援をする。また、言葉だけでなく、表情やしぐさ、声の質なども、状況をみながら言葉にして伝えていく。

 

来談者中心療法

アメリカの心理学者カール・ロジャースが創始した理論。その中の『カウンセラーの態度条件』は介護福祉職にも当てはまる。援助者に必要とされる条件は3つあり、自己一致共感的理解無条件の肯定的受容である。以下で詳しくみていく。

援助者の自己一致
自己概念(自分は臆病者だ、私はかわいい、というような自己に対するイメージ)と行動(体験)が一致していること。

分かりやすいように自己一致していない例をあげると、

例1)自分は正直者だと思い込んでいるが嘘をよくつく
例2)いじめを受けていながら笑顔(ひきつった)を浮かべている

自己概念の一致とは、楽しい時に笑い、つらい時には泣けること、思い込みに囚われず客観的に事実を受け入れられること。援助者は自己一致していなければならない。

 

共感的理解
利用者の考え方、見方を自分のことであるかのように体験できること。重要なのは利用者の世界を「あたかも」自分のことのように感じることであり、同情することではない。

 

無条件の肯定的な関心
どんなに利用者が矛盾していようと、否定的であったり、敵対的であったり、または好意的であっても、援助者は利用者を評価することなく、利用者のありのままを理解し受容しようとする積極的な態度。援助者は自身の価値観や常識に囚われず、利用者の人格をかけがえのないものとして関心を向ける。

 

 

 

◆言語的コミュニケーションに用いる道具

 

記録や介護日誌
言語的コミュニケーションとしての記録である。利用者の言動や状態の変化、実施したサービスなどを記述してとどめることにより、支援の反省や共有、その日実施した介護サービスの証明として利用できる。

 

携帯用会話補助装置(トーキングエイドなど)
ワープロのように入力すると文字が表示され、それを音声で読み上げたり、プリントアウトしたりできる機械。脳性麻痺などの肢体不自由者や失語症、知的障害など、会話や筆談が困難な障害者に利用されている。

 

■透明文字盤
透明板に五十音表を記入し、発信者と受信者が文字盤を挟んで向かい合い、メッセージを1文字ずつ伝えて/読みとっていく方法を透明文字盤と呼んでいる。 話し手(要介護者)と聞き手(介護者)は正面に向き合って、目線が一直線になった文字や単語が言いたい言葉となる。

点字を書く道具
・点字器(点字盤)
・点字タイプライター